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米国際放送,米国内でも放送可能に

アメリカ政府の放送管理委員会(BBG)が管轄するVOA(ボイス・オブ・アメリカ)などの国際放送は,これまで米国内で放送することが法的に禁じられていたが,65年ぶりの法改正によって今後はアメリカ国内でも放送することが可能になった。

アメリカの国際放送は現在5つの放送機関により合計50を超える言語で行われているが,これらの放送はパブリック・ディプロマシーの一環と位置づけられている。しかし,アメリカでは1948年の情報教育交流法によって,パブリック・ディプロマシーの資金で制作された番組を国内で放送することが禁止された。また,そうした資金を使って国内の世論に影響を与えてはならないという別の法的な規定もある。

この問題をめぐってオバマ大統領は1月2日,国内での放送禁止を解除する内容を盛り込んだ2013年国防授権法に署名し,今後は米国内でも国際放送を視聴することが可能になった。

今回の規制緩和の背景には,アメリカ国内で国際放送を視聴したいという要望の高まりがある。BBGによれば,これまでも国内の放送局や大学などから番組コンテンツの提供を求められており,移民など少数民族のコミュニティーからは出身地の言語による番組を国内で放送してほしいとの声が寄せられていた。さらに,国内でもインターネットで国際放送の内容を把握できることから,これまでの規制が形骸化していることも指摘されていた。

なお,今回の法改正でも国際放送機関が国内向けに番組制作を行うことは認められておらず,番組が海外向けに制作されることは変わらない。

斉藤正幸