メディアフォーカス

世界最大規模の家電見本市メディア特性への回帰

1月8日から11日,アメリカのラスベガスで,毎年恒例のCES(家電見本市)が開催された。主催したCEA(米国家電協会)によれば,会場合計で過去最大の約17万8,000平方メートルという広大なスペースに,3,250超の展示企業が2万点以上の新製品を発表し,世界170か国超から計15万人以上が参加した。

テレビ・放送関連の今年の特徴は,4K(フルハイビジョンの4倍の解像度)や8K(同16倍)に代表される「画質」と,80~110インチクラスのテレビに代表される「大画面」,そして「更なる薄型化」に集約される。2011年のCESで登場した「スマートテレビ」により,テレビ端末を高機能化する方向性に進んでいたのに対し,スマートフォンやタブレット端末が普及するなかで,テレビが本来持つメディア特性への回帰が鮮明になっている。

ソニーとパナソニックはそれぞれ製造方式が違う,有機ELとしては世界最大の56インチ4Kテレビを展示し,シャープは85インチの8K液晶テレビを展示した。4Kに関しては,1月末,日本の総務省が2014年夏からの放送開始を表明したほか,CES会場でも東芝の超解像技術による既存映像の応用事例や,圧縮技術の進展による通信での伝送事例が紹介されるなど,コンテンツ不足が課題となった3Dテレビでの教訓を経て,今回は具体的な映像配信手法まで踏み込むことで,普及に向けた各社の熱意が伝わる内容となった。

「薄型化」については,韓国メーカーのサムスン電子やLG電子が,画面を緩やかにカーブさせた曲面の有機ELテレビを展示し,端末としてのテレビは,今後,高画質と大画面に加え,更なる薄型化と柔軟化で最終的には収納できる方向へと進むことを予見させた。

薄型化を象徴する動きとして,今年はサウンドバー(外付けスピーカー)の展示が目立った。テレビの薄型化が進むほど良質なスピーカーの搭載が難しくなることを受けての展開だが,こうした展示が増えたことは,テレビの画質・大画面・更なる薄型化への“機能集中”が進む方向にあることを示している。

また,今回のCESでは,あらゆるサービスにスマートフォンを絡めた展示が目立ち,話題の中心がこれまでのテレビから,スマートフォンやタブレットなどのモバイル端末へと移行することを感じさせた。

基調講演でもスマートフォンに関連した話が中心となり,併催された「セカンドスクリーンサミット」やCESのセッションでは,「もはやスマートフォンがメインスクリーン」との発言もあった。更に年々拡大する自動車関連の展示でも,カーナビなどへのスマートフォンの応用が目立った。スクリーンとしてモバイル端末が主となることは,サービスとしても通信が主となることを意味し,放送事業者にとっては更なる対応が求められることになる。

展示会としては,翌2月にスペインで開催される「モバイルワールドコングレス」や,「モーターショー」等の専門展示会とどう差別化するのか,また,アップルやグーグル,タブレット端末市場に参入したアマゾンやマイクロソフトが展示をしないなど,重要性を疑問視する声があるのも事実である。しかし,あらゆるサービスの軸としてモバイル端末が台頭するなかで,業種や規模を問わず多様なメーカーが一堂に会し,総合的な方向性を予見させるCESは,引き続き注目を集め続けると思われる。

小川浩司