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独,放送受信料に替わる放送負担金制度開始

ドイツの公共放送の主な財源である放送受信料が,2013年1月1日に「放送負担金」に切り替わった。これまでの放送受信料は,受信機を備えた世帯や事業者に支払い義務があったが,今後は,受信機のあるなしにかかわらず,すべての世帯と事業所から徴収されることになる。またテレビ,ラジオ,パソコンといった受信機の種類に応じた支払い額の区別も撤廃され,一本化された。

制度改革が求められた理由は,パソコンやスマートフォンにみられるように,受信機や受信環境が多様化したことである。この結果,様々な用途で使われる受信機の所有を根拠に放送受信料を徴収することが説得力を失いつつあり,将来的に公平負担の原則の維持が危ぶまれる,という認識を,公共放送も州政府の側ももつようになった。こうして2006年末から簡素で公平な受信料のあり方について検討が始まり,2010年末に放送負担金制度の導入が決まった。

負担金の額は,2014年まではこれまでのテレビ所有世帯と同じ月額17.98ユーロ(約2,000円)である。公共放送側は,90%の世帯にとっては実質的な変更はないと説明している。事業所には,従業員数に応じた10段階の額が設定されている。なお,公共放送の収入に増減が出ないことがこの制度変更の前提となっており,実施1年後の状況を見て,必要があれば額を変更することになっている。

一方,ここにきて新制度に反発する動きも出てきた。2012年5月にバイエルン州で,12月にラインラント=プファルツ州で新制度が州憲法に違反するとの提訴があった。いずれも現在審理中であるが,州政府と公共放送は合憲性を確信していると述べている。

杉内有介