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オーストリア,公共放送ORFのフェイスブック使用巡り,法律論議

オーストリアの公共放送ORFのフェイスブック使用を巡って,ORFの制定法の論議が高まっている。

2012年1月,通信監督庁(KommAustria)は,ORFが使用しているフェイスブックのうち39サイトの使用を差し止める決定を行った。対象となるサイトは,旅行や懸賞などに関するもので,放送の業務とは直接関係のないサイトだとしている。通信監督庁は,ORFが業務に関係のない分野についてソーシャルネットワーキングサービス(SNS)を使用することはORF法に違反するとした。

これに対しORFは,通信監督庁の活動を監督する連邦通信評議会に対する不服申し立てを行政裁判所に行ったが,11月14日,行政裁判所は,ORFの申し立てには根拠がないとして,却下した。行政裁は,ORFがSNSを使用できるのは,日々更新されるニュースリポートなどと関係のある事柄と判断された場合に限定されると指摘した。

しかしORFは,行政裁の決定を不服として,憲法裁判所に「憲法異議」の訴えを起こした。11月16日,憲法裁は,ORFに対しフェイスブックの使用を,全面的に認める決定を下した。ただしこの決定は暫定的なもので,最終的な決定は,2013年の春にも出される見通しだとしている。これについて,憲法裁の広報担当者は,「ORFの申し立てが最終的に却下される可能性もある」と述べた。

ORF法では,インターネットなどを使用したオンラインサービスについて,28項目にわたって規定している。ORFの公共的なサービスとして,SNSの使用がどこまで認められるのか,今後の憲法裁の判断に注目が集まっている。

熊谷 洋