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米ニューヨーク・タイムズの新社長にBBCトンプソン会長が就任へ

NYタイムズは8月14日,2011年12月以来不在だった同社の社長兼CEOに,BBCのマーク・トンプソン会長が就任すると発表した。

トンプソン氏は55歳。1979年にBBCに入り,看板番組の『夜9時のニュース』や『パノラマ』などを担当し,2000年にテレビ総局長となった。その後2年間,非営利放送局チャンネル4のトップを務めた後,2004年にBBCに会長として戻り,2万人の職員と年間40万時間に及ぶ番組群を統括してきた。トンプソン氏は会長在任中の8年間,変革期にあったBBCで様々な経営改革を行った。見逃した番組をネットで視聴できるサービスのiPlayerを導入するなど,コンテンツのデジタル発信に積極的に取り組む一方で,5年間で2,000人を削減するなどの経営合理化も行った。

NYタイムズのサルツバーガー会長は,社外から畑違いの外国人を自社のトップに招くことについて,「タイムズには活字のプロ,広告のプロは数多くいるが,これからの時代は映像,ソーシャル,そしてモバイルがカギを握る」と述べた上で,「トンプソン氏には才能と経験に加え,BBCでの多くの実績があり,これからのデジタル時代のメディアを担うにふさわしい」と述べた。NYタイムズは,紙面のオンライン化へのシフトを急速に進めており,2011年3月に始めた有料デジタル版の購読者は50万を超えているが,依然として厳しい経営状況が続いている。トンプソン氏を迎えて,さらに多様なデジタル展開と収入の安定を目指すとみられている。同氏は9月に退任し,11月にタイムズ社長に就任する。

柴田 厚