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イタリア,全土で地上デジタル放送へ移行

イタリアでは,7月4日,南部シチリア州の州都パレルモとその郊外でアナログ放送が終了し,翌5日には全土で地上デジタル放送へと完全移行した。イタリア政府は,2008年秋より,地中海に浮かぶ島サルデーニャ州を先駆けに,全国を16のエリアに分けて,地域毎にデジタル放送への移行を進めてきた。アナログ放送時代には10程度だった全国放送のチャンネルは,デジタル化により,有料チャンネルを含めると合計で約75チャンネルと大幅に増加し,多チャンネル化が実現した。

しかし,アナログ放送の終了作業はこれまで必ずしも順調に進んできた訳ではなかった。イタリアでは2003年12月に地上デジタル放送が始まり,政府は当初,アナログ放送の終了時期を2006年末と定めていた。しかし地上デジタル放送は思うように普及せず,最終的に政府は終了時期を2012年6月末へと延期した。

政府は,地上デジタル放送の普及を促進するために,高齢者や低所得者を対象に移行地域毎に独自の助成施策を行い,デジタル受信機器の購入に対し,一世帯当たり50~150ユーロの購入後の現金払い戻しや,最大200ユーロの所得税控除などの助成策を講じた。

イタリアにおけるアナログ放送終了後の周波数の有効利用としては,4G移動体次世代通信の導入に必要な周波数の十分な確保と割り当てや,地上デジタル放送上で運営されている550局以上の地域チャンネルの電波干渉の解決など,複数の選択肢が検討されている。

広塚洋子