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中国政府,海外ドラマなどの放送規制強化

中国の国家ラジオ映画テレビ総局(SARFT)は2月9日,プライムタイムの時間帯に海外のテレビドラマや映画の放送を禁止するなどとした新たな規制を通知した。通知によると,中国のテレビ局が海外のテレビドラマや映画を放送する際は,原則としてその量を50話以内とし,夜7時から10時までの間は放送してはならないとした。同時に,各テレビチャンネルとも1日のテレビドラマ・映画の放送時間のうち海外作品の比率が25%を超えないよう指示している。この規制によって,現在,主に香港・台湾・韓国・タイなどから輸入されているドラマや映画の放送に影響が出るものと見られている。

中国では,2012年1月から娯楽番組の放送制限が行われたり,テレビドラマの番組途中のコマーシャル挿入が禁止されたりするなど,当局による規制強化が相次いでいる。この背景には,2011年10月の中国共産党中央委員会総会で「社会主義の核心価値体系の建設推進」などを謳った「文化体制改革」に関する決定が出たのを受けて,政府が放送メディアに対し,利潤追求よりも党の宣伝強化を重視するよう要求したことがある。一方で,今回の規制は主に湖南テレビの衛星チャンネルなど,人気の高い海外作品の放送を通じて中国中央テレビ(CCTV)と視聴率を競っていた地方テレビ局への影響が大きいとされ,SARFTの裏の目的は,SARFTに多額の上納金を納めているCCTVを保護することとの見方も強い。今後はこうした海外の動画コンテンツが,テレビより規制のゆるいインターネットで見られる傾向が強まり,地方テレビ局の運営は厳しさを増すことが予想される。

山田賢一