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英民放の報道番組でゲーム映像を誤用

イギリスの商業放送ITVが2011年に放送したドキュメンタリー番組で,ビデオゲームの映像が誤って使われていたとして,イギリスの放送と通信分野の独立規制機関Ofcom(Office of Communications)は1月23日,「視聴者の信用を損なうもので,放送コードに違反する」と指摘した。

この番組は,IRA(アイルランド共和軍)とリビアのカダフィ元大佐の繋がりを描いたもので,2011年9月に放送された。問題の映像は,IRAが英国軍のヘリコプターを撃ち落とす瞬間だとされ,「カダフィから提供された武器を使えば,ヘリコプターさえ撃ち落とせる」とナレーションが付けられていた。ところが,この映像は2年前に発売されたビデオゲームの戦闘シーンだと気づいたゲームファンがネットに投稿し,誤用が明らかになった。

ITVでは「編集過程で間違った映像が紛れ込んでしまった不運な人為的ミスだ」と,誤用を認め,視聴者に謝罪するとともに,オンデマンドの見逃しサービスから番組を外した。誤用が起きたのは,この映像が,2011年3月,インターネットの動画サイトに「IRA,英国軍ヘリ撃墜」というタイトルで投稿され,これを見つけたディレクターが本物と勘違いして使ってしまったことが原因と見られている。

Ofcomには,この件について26人から苦情の申し立てがあった。放送コード違反があれば,Ofcomは「指導・訂正放送命令・罰金・免許没収」の4段階で制裁を科すことができるが,今回のケースは「違反にあたる」と認定したものの,ITVがすでに謝罪し改善策も取っているとして,具体的制裁は科さなかった。

田中孝宜