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スイス,受信料を全世帯から一律徴収する方針を決定

スイスの国民議会(下院)は9月13日,受信料をテレビ・ラジオ受信機の所有者から徴収する現行制度に替え,受信機の所有に関わらず,すべての世帯と事業所から徴収する新制度に移行することを議決した。隣国ドイツで2013年から実施される方式にならった形である。この後,連邦政府が法案を作成し,早ければ法律は2015年に発効,新制度の実施は2017年になる見こみである。

下院の通信委員会は2009年2月,受信機が多機能化・多様化しているなか,受信機の所有を根拠に受信料を徴収する現行制度を継続するのは困難であるとして,これに替わるどのような方法があるか検討するよう連邦政府に要請した。連邦政府は2010年1月,詳細な報告書を公表し,受信機所有に関わらず,すべての世帯と事業所から一律徴収する方法がもっとも適切だとする見解を出した。その後,上院の修正により,老齢・遺族年金および障害年金の受給世帯のほか,小規模の事業所も支払いを免除されることになった。さらに,現在大手通信事業者Swisscomの子会社が行っている徴収業務は,今後公募により選定されることが決まった。

また今回,一部の議員から,現在年額462スイスフラン(約4万4,000円)の受信料を,200スイスフラン(約1万9,000円)にまで下げるべきだとする請願が提出されていたが,下院で否決された。スイスの受信料は現在ヨーロッパで最高額。受信料収入は,主にスイス公共放送協会SRG SSRに配分されるほか,約4%が地域の商業放送事業者にも配分されている。

杉内有介