メディアフォーカス

混乱続くスペイン公共放送

スペインの公共放送機関RTVE(スペイン放送協会)が迷走を続けている。9月21日,RTVEの最高意思決定機関である経営評議会は,放送前のニュース原稿を評議員が閲覧できるよう制度改革を行うことを決めた。これに対し,事前閲覧は検閲につながるとして反対する声が一斉に上がったことから,経営評議会は2日後に決定を撤回する事態に追い込まれた。

RTVEの経営評議会は,与野党各党や主要労働組合からの推薦を受けた定数12人の評議員で構成され,業務執行責任者の会長もそのうちの1人である。今回の制度改革の提案は,保守派の野党・人民党(PP)系の評議員から出された。人民党はかねてからRTVEの報道姿勢が与党・社会党寄りであると批判してきており,決定は社会党系の評議員らが欠席する中で行われた。これに対し,RTVEの記者らがニュースの事前閲覧は検閲につながるとして強く反発しただけでなく,当の人民党からも批判の声が上がるなど,事態は大きな反響を呼んだ。そのため,経営評議会は23日に再度審議を行い,制度改正を撤回することとなった。

RTVEをめぐっては,会長の息子が経営する企業とRTVEとの取引が問題視され,7月に会長が任期途中で辞任した。RTVEの会長は,国会で3分の2以上の賛成で選出されると決められているが,与野党が対立する中,規定を満たす候補者がいないことから会長職は空席となっている。そのため,評議員が月替わりで会長職を代行しているが,それは違法だとする指摘も出ている。一連の騒動で,広告放送を廃止し赤字経営が続く公共放送RTVEの組織のあり方が改めて問われている。

斉藤正幸