メディアフォーカス

仏地デジ「ボーナスチャンネル」中止

アナログ放送の終了に伴って,既存の商業放送大手3社に付与されることになっていた,地上デジタル放送の“ボーナスチャンネル”は,付与取り消しが確実となった。

このボーナスチャンネルは,2007年5月の法律で定められたもので,2005年以来新規の地上デジタル放送局の開設が次々と認可され,結果として既存の放送局の視聴シェアが下がったことの代償としてTF1,M6,Canal+(カナル・プリュス)の大手商業放送3社に,地デジの「もう1チャンネル」を,2011年11月末のアナログ放送終了後に優先的に与えるというものだ。

これに対してEU(欧州連合)の行政執行機関である欧州委員会は2010年11月,「放送免許の付与は,非差別的な客観的基準に基づいて行われるべきだ」とフランス政府に警告した。さらに今年9月29日,欧州司法裁判所に持ち込まれる前段階の手続きの「根拠ある意見」(motivated opinion)をフランス政府に通達し,この中で欧州委員会は「公正な競争が全くないままチャンネルを付与することは,ほかの競争相手に不利益を被らせ,視聴者へのより魅力あるサービスの提供の機会を奪うものである」としてEU法違反の判断を伝えた。フランス政府は2か月以内に返答しなければならないが,この問題について独立規制機関CSAは9月12日発表の報告書の中で,「ボーナスチャンネルは欧州委員会によって阻止される可能性が高く,法を破棄するか,または期日を延期するべきだ」として付与取り消し,または先送りの方針を示しており,事実上ボーナスチャンネルは開設されないことが確実となった。

新田哲郎