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ストロスカーンIMF前専務理事,手錠映像に仏,独立規制機関が警告

フランスのCSA(視聴覚高等評議会)は5月17日,ニューヨークのホテルの女性従業員に対する暴行などの疑いで逮捕されたIMF=国際通貨基金のストロスカーン前専務理事が,手錠をかけられて連行される映像を使用しないようテレビ局に対して警告した。

CSAは警告の中で,2000年6月に制定された人権擁護に関する法では,「有罪が宣告されていない推定無罪の段階での,手錠がかけられた容疑者の映像の放送に対しては罰金を科す」とあると指摘したうえで,「表現の自由と知る権利の原則のもとでも,容疑者の尊厳を損ねてはならないことを考慮すべきである」と求めている。

これに対して公共放送フランステレビジョンのテュイエ編集局長は,「この映像はCNNやBBCなどによって世界中に流された。ストロスカーン氏の様子からは,裁判を闘いぬくという決意が感じられ,尊厳を損ねるものではない。この法律の適用と限界について論議が必要だ」と反発した。また,商業放送最大手のTF1のネル編集局長も「この映像は様々な情報を含んでいるので,知る権利が適用されるべきだ」と反論した。

ストロスカーン氏は世界的な金融危機やヨーロッパの財政危機への対応をめぐって手腕を発揮し,来年のフランス大統領選挙で,最大野党社会党の最有力候補と目されていた。支持率は現職のサルコジ大統領らを大きく引き離していただけに,フランスの世論調査では半数以上の人が事件は謀略だと答えている。ストロスカーン氏は無罪を主張して全面的に争う構えである。

新田哲郎