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米・周波数帯域の利用をめぐり,FCCと放送事業者の対立が激化

4月12日にラスベガスで行われた「NAB(全米放送事業者協会)ショー2011」の講演で,FCC(連邦通信委員会)のジェナカウスキー委員長が,急速に普及するブロードバンド需要に対応するため,テレビ局などが所有する周波数帯域を自主的に返上することを求めたのに対して,NABのスミス会長が不本意な帯域の明け渡し要求とは“全面的に対決する”と述べるなど,周波数帯域の扱いをめぐって両者が激しく対立している。

オバマ政権の意向を受けてFCCでは,教育や医療,ビジネスなどあらゆる分野でインターネットを社会の基盤インフラとするため,今後10年間で500MHz分の帯域を確保する必要があるとしている。また,スマートフォンやタブレットPCの急速な普及も帯域の需要急増に拍車をかけている。このためFCCは,放送局所有の帯域のうち使用していない部分を“自主的に”返してもらい,それをオークションで販売して売り上げの一部を放送局に還元することを提案した。これに対して放送局側は,ケーブルや衛星の普及で地上放送受信者が減り影響力が低下している背景もあり,放送事業の縮小につながる帯域の返上には強く反対している。CBSのムーンベス会長は「周波数帯域は放送局にとっての“血液”であり,自主的に返すことなどあり得ない」と述べたが,経営が苦しい一部の放送局にはオークション収入を期待する声もある。放送事業者はFCCの強制的な徴収を懸念しており,多くの帯域を使いたいITや通信事業者との間でロビー活動での駆け引きが続いている。

柴田 厚