メディアフォーカス

指名委員会の立ち上げ遅れ 会長候補への打診と就任要請を混同

~NHK経営委が検証と総括~

NHK経営委員会は2011年3月8日,会長選考を巡るNHK監査委員会の調査報告(本誌11年4月号「メディア・フォーカス」参照)を受けて,「新会長任命に至るまでの過程についての検証と総括」を発表した。

それによると,混乱の原因の一つとして,会長選考のための指名委員会の立ち上げが10年11月24日と遅く,周到に検討し議論する時間が十分でなかったことをあげている。放送法改正で経営委員会の権限が強化されてから初めての会長選考であり,早期の取り組みを要請する委員もいたが,小丸前委員長の判断でこの時期になった。

会長任命の公正性,透明性を確保するため,候補者に事前打診をしないという前提で,経営委員から複数の候補者が推薦され,打診する優先順位が多数決で決定された。相対多数で1位となった安西祐一郎氏について,候補者として受諾があっても,会長選任議決に必要な9票の賛成が得られる見通しはなかったが,一本化の内部作業は行われなかった。

安西氏に対しては,推薦者である前委員長が単独で打診し,前委員長から受諾の旨の連絡があったが,各委員は会長候補になることを安西氏が受諾したと理解した。

安西氏に対する前経営委員長の打診が,経営委員会で決定された手続き通りの正確な交渉だったか,「疑念を否めない」としている。

新聞などで経営委員会の会議内容が報道されたことについて,監査委員会の調査報告は,各経営委員が各種報道の情報源になったという事実は認められなかったとしているが,経営委員会としては経営委員12名だけで議論した内容が報道された事実から,「情報管理に不備があったことは間違いなく,経営委員会として強く反省する」としている。

次に,問題点として,選考手続きと情報管理に関して,以下の点をあげた。

選考手続きについては,

  • 会長候補への打診の優先順位の決定において,第1位の候補者が会長任命に必要な9票に届かない可能性がある
  • 会長候補者への打診と会長就任要請の違いを正確に伝えなければ誤解を招くおそれがある,また,会長就任ではなく候補者になることへの打診は失礼に当たる

などの問題点をあげ,手続きを再検討すべきであるとしている。

次回の会長選出に向けては,公正性,透明性を確保する趣旨を踏まえ,経営委員会で適正な手続きを明文化することになった。

情報管理については,

  • 外部に対する情報伝達については経営委員が共通の認識を持つ
  • 重要事項の発表にあたっては,複数の経営委員が立ち会う
  • 委員会内部で情報共有化のルールを作る
  • 経営委員の間で情報交換ルート,伝達ルールを確立する

としている。

経営委員会は公式に安西氏に謝罪し,会長選考にともなう混乱については,前経営委員長が委員を辞任したことから包括的な責任をとったとの認識を明らかにした。

奥田良胤