3月11日午後2時46分にマグニチュード9.0の大地震が日本列島を襲ったほぼ5分後，アメリカの金融情報チャンネル「ブルームバーグ」は，NHKの情報として「日本で巨大地震発生」の第一報を流した。これを先駆けとして，世界中のメディアが日本の大震災のニュースを伝え始めたが，この時，海外のメディアの情報源として広く利用されたのがNHKの英語によるテレビ国際放送「NHKワールドTV」の情報と中継映像だった。NHKワールドTVは，もともとテレビによる国際的な情報発信を目的とした外国人向け国際放送であり，2009年からは1日24時間毎正時に英語ニュースを放送している。

NHKワールドTVを放送しているNHK国際放送局では，今回の大地震発生から1週間の間に，海外での震災報道にNHKワールドTVがどの程度利用されたかについて緊急調査を行った。それによると，テレビに限らずさまざまなメディアで幅広くNHKの情報と映像が利用されていることがわかった。

主な利用状況は以下のとおり。

• ① NHKワールドTVの映像をテレビ・ネットで同時に放送･配信したことが確認された放送局
  BBC（イギリス），フランス24（フランスのテレビ国際放送），ユーロニュース（欧州），アルジャジーラ（カタール），アルフッラ（米のアラブ向け放送），アルアラビア（サウジアラビア），プレスTV（イラン国営国際放送）など。
• ② 同時ではないが，NHKワールドTVの映像利用が確認された放送局米3大ネットワークやCNNインターナショナルなど31か国･地域の47放送機関。
• ③ 新聞･雑誌社による映像使用自社サイト上でNHKワールドTVの映像を動画として提供した海外の新聞･雑誌社は，3月17日までに確認できた範囲で14か国26社。米ニューヨーク・タイムズ，英ガーディアン，仏ルモンド，独フランクフルター・アルゲマイネなど。
• ④ USTREAMを通じたネット映像の使用3月13日にNHK は動画サイトUSTREAMでNHKワールドTVの提供を開始した。オランダのラジオ・ネーデルランド，米ニューヨーク･タイムズ， ロシア国営RIAノーボスチ通信などがNHKワールドTVのUSTREAMの映像を自社のサイトで紹介。

また，英インディペンデント紙によると，3月11日の「ツイッターでの話題ランキング」で「NHKワールド」という言葉が6位になるなど，NHKワールドTVの存在は，ツイッターやスマートフォン向けアプリを通して多くの人々に知られるようになったという。

海外の放送機関からは，NHKの報道姿勢を評価する声も寄せられた。そのうち，米公共放送ネットワークPBS系列局のボストンWGBHからは，「NHKワールドTVの一貫して気品と自制を維持した丁寧な報道に感銘を受けた。NHKワールドTVの報道は，揺るぎない品格を備え，個人の欲求よりも公共の利益を優先する日本社会の姿が反映されていると感じた。」との番組プロデューサーの声が寄せられた。