メディアフォーカス

台湾,政府の「記事を装った広告」禁止へ

台湾の立法院は1月12日,予算法の修正案を可決し,今後,政府の各機関などが予算を使ってメディアで広告を行う際,一般記事のように見せかける行為を禁止することになった。

「記事を装った広告」の問題は,恒常的に過当競争の状態にある台湾のテレビ・ラジオや新聞で横行していると言われてきた。この問題が突然大きな注目を集めるようになったのは,2010年12月,大手紙中国時報を退社した黄哲斌氏が自らのブログでその実態を暴露したためである。「業配新聞」と呼ばれるこうした記事は,政府や企業から金銭を受け取って,その政策や商品をPRする記事を「広告」と明示せずに書くもので,時には政府や企業が原稿を用意して「一字も変えてはならない」と指示されることもあったという。

告発を受けて,メディア研究の学者約130人が連名で同月26日,政府によるこうした行為は税金を使って国民を騙すものと厳しく批判,政府による「記事を装った広告」の禁止と,メディア側の自制を求めた。批判の高まりに与野党も迅速に動き,黄氏の告発から1か月という短期間で,予算法の改正を実現した。改正予算法では,今後,政府の各機関に加え,公営事業と,政府が資金の50%以上を拠出している財団法人や同じく50%以上を出資している事業について,一律に「記事を装った広告」を禁止することになった。

今回の法改正について,「記事を装った広告」に反対してきた市民団体の「反収買新聞聯盟」は,政府の拠出金や出資の比率が50%以上という規定は甘すぎると批判すると共に,財閥による「記事を装った広告」も規制すべきと主張している。

山田賢一