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妻に契約の代理権認めるNHK受信契約訴訟で札幌高裁判決

NHKが札幌市に住む男性に滞納受信料の支払いを求めていた控訴審の判決が2010年11月5日札幌高裁であった。

妻が夫に無断でNHKと受信契約を結んだのは有効か無効かが争われた訴訟だったが,札幌高裁の末永進裁判長は,テレビの設置者は受信契約の締結義務を負い,受信料の支払いは日常家事行為に含まれると判断し,妻に契約の代理権があったと認定して1審の札幌地裁の判決を取り消し,男性に6年4か月分の受信料17万6,940円の支払いを命じた。

男性は,妻が夫に無断で結んだ自分名義の受信契約は無効だとして,03年12月以降受信料を払わなかったため,NHKは08年3月に,滞納受信料を支払うよう求め札幌簡裁へ支払督促を申し立てた。

しかし,男性が異議を申し立てたため,裁判所の職権で簡裁から札幌地裁に移され,同地裁で審理が行われた。

民法では,電気や水道の契約や買い物などの日常家事で夫婦の一方が第三者と交わした法律行為は連帯責任を負うと定めているが,1審の札幌地裁は10年3月に,契約当事者間に対価関係がなく,一方だけが債務を負担する受信契約には民法の規定が適用されず,男性が妻に契約の代理権を与えた事実もない,としてNHKの請求を退けた。

このためNHKが控訴していたもので,今回の判決で,支払督促に滞納受信者が異議を申し立てた各地の訴訟では,すべてNHKの主張が認められたことになる。

奥田良胤