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公共放送への財源補てんの通信事業課税仏政府,EC決定を拒否の構え

公共放送の広告廃止に伴う財源補てんとして,フランス,スペイン両国政府が電気通信事業者 に課している新税について,EUの行政執行機関であるEC(欧州委員会)がこれを停止するよう求めている問題で,フランス政府はECの要請を拒否する構えだ。

ECは9月30日,コミュニケの形で「根拠ある意見」を発表,この中で「通信事業者からの税収は,通信事業者に対する規制のコストに使われるべき」で,ほかの目的に使うのはEUの電気通信事業規則に違反するとして,課税の停止を両国政府に求めた。

これに対してフランス政府のフレデリック・ミッテラン文化・コミュニケーション相は10月4日,「公共放送への財源補てんは国庫からの予算措置であり,通信事業者からの税収が直接的に公共放送の財源に割り当てられる訳ではない」と述べ反論した。

また,クリスティーヌ・ラガード経済・産業相は「税制は各国政府の権限であるはずなのに,ECの決定に従えば,この業界への課税はできないことになってしまう」として「法廷での決着に向けて準備する」と述べた。

フランスは,公共放送の広告廃止に伴って,電気通信事業者の国内収益に対して2009年3月から0.9%の新税を課しており,年間でおよそ3億8,000万ユーロ(約425億円)の税収がある。

フランス・スペイン両国政府からの正式な返答の期限は通告から2か月以内の11月末までで,ECは,決定に従うとの返事がなければ,欧州司法裁判所に訴えるとしている。

新田哲郎