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メディアフォーカス

滞納受信料NHKが初の強制執行

NHKは2010年9月3日,受信契約を結んでいながら受信料を滞納し,支払いを求めても拒否していた東京在住者の契約1件に対して,財産を差し押さえる強制執行を実施し,10年7月に滞納額の一部を回収したと発表した。この受信者は9月3日に滞納分の残額を支払った。NHKが強制執行で受信料を回収したのは初めてである。

放送法では,32条1項でNHKの放送を受信できるテレビ所有世帯にNHKとの契約を義務付けているが,受信契約をしていない世帯と契約をしても受信料を滞納している世帯が全体の30%程度あることがわかり,04年に相次いで明るみに出た不祥事以降,NHKに受信料の契約・収納率を上げる努力を求める声が高まっていた。

このためNHKは06年1月に公表した「3か年経営計画」で,滞納者に対する「民事手続きによる支払い督促」を行うことを表明し,06年11月に全国で33件の滞納者に対し初めて「支払い督促」を行った。

「支払い督促」は,債務者に対して債権者が行う支払い申立てに基づいて簡易裁判所が行う略式手続きである。

NHKはその後,「支払い督促」の申立てを全国の39都道府県に拡大させ,10年8月31日現在で,申立ての総件数は1,108件となっている。大半の視聴者は支払いに応じているが,なかには簡易裁判所の支払い督促確定後も,決定を無視して受信料の支払いを拒否し,強制執行の対象となる視聴者もあった。

NHKは対象世帯に対して,訪問や文書などで支払い要請を続けたが,このうち不払いの意思が固かった8件に対して,10年5月14日に財産を差し押さえる強制執行を予告する通知書を発送した。

受信料の滞納期間は54か月から36か月,滞納額の最高は13万1,800円,最低は7万1,746円,総額は48万5,858円であった。

8件のうち3件は支払われたが,残る5件が支払わなかったため,NHKは10年5月26日に滞納者の所在地を管轄する地方裁判所に強制執行を申立てた。5 件のうち4件は10年7月2日までに受信料が支払われたため,申立ては取り下げられたが,残る東京の1件についてNHKは7月に財産を差し押さえ,滞納額の一部を回収した。残額は9月3日に支払われたが,強制執行の対象となった1件の滞納額や,強制執行の具体的な手段,回収額について,NHKは「本人の特定につながる」として明らかにしていない。

NHKは,今後も受信料の公平負担を徹底するため,対応を尽くしたうえで,やむをえないと判断した場合には,支払い督促制度と強制執行手続きを活用するとしている。

一方,公平負担をさらに徹底するためには,テレビを所有しているにもかかわらず受信契約をしていない世帯・事業所への対策をどうするかが,今後の課題となる。放送法に契約義務はあっても,NHKが家庭や事業所に直接踏み込んでテレビ所有の有無を調査することはできない。ロックマンションの普及などで視聴者へのアクセスが難しくなっている現状等を考慮すると,非契約世帯・事業所のテレビ確認は極めて困難である。

NHKには強制執行とは別に,公共放送を支える受信料制度への理解を視聴者に徹底する更なる努力が求められている。

奥田良胤