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日本版フェアユース規定関係団体の意見の隔たり埋まらず

文化庁・文化審議会の著作権分科会法制問題小委員会は,著作物を権利者の許可なく利用できる範囲を拡大する,いわゆる日本版フェアユース規定の導入に関する関係団体からの最終的なヒアリングを2010 年8月5日までに行った。日本版フェアユース規定の導入に関しては,同小委員会で検討を重ね,2010 年5月に「権利制限の一般規定に関する中間まとめ」を行い,「導入が必要」との意見を公表した。そして,「中間まとめ」に対する意見募集を6月24日まで行い,さらに最終的なヒアリングを実施したが,関係団体の意見の隔たりは埋まっていない。

同小委員会の「中間まとめ」は,インターネットの発展などで,著作物の創作や利用を取り巻く環境の変化が急激にすすんでおり,利用者側からの要請も大きいことなどを導入の必要性として挙げ,一方で著作権が侵害されるとの権利者側の危惧に配慮して,権利制限規定の範囲を明らかにしている。

具体的には,(A)その著作物の利用を主たる目的とせず,付随的に生ずるもので,その利用が質的又は量的に社会通念上軽微であるもの,(B)著作物が適法に利用される過程において合理的に必要と認められる利用であり,かつ,その利用が質的又は量的に社会通念上軽微であるもの,(C)著作物の種類,用途並びにその利用目的,態様に照らして,その著作物の表現を知覚することを通じてこれを享受するための利用ではないもの,の3 類型を提示している。

「中間まとめ」に対して,日本新聞協会,日本雑誌協会,日本文芸家協会などの権利者団体が反対の意見表明をしている。一方,日本弁護士連合会やデジタル・コンテンツ法有識者フォーラムなどが賛成意見を出している。

このうち日本新聞協会は,①一般規定の導入必要性について十分な議論がされていない。 ② 3 類型の適用範囲や判断基準があいまいで,権利者・利用者の双方に不都合が生じうる。 ③技術開発・検証のための複製やウェブ情報の自動収集などが該当するとされるC 類型は,規定振りや解釈によって規定の射程が著しく変動するおそれがある,と指摘した。

さらに,一般規定の導入が著作物利用に関する萎縮(いしゅく)効果解消につながるかどうかには疑問がある,ネット上などで音楽・映像・ゲームソフトなどの違法コンテンツや,新聞・雑誌などの無断転載が問題になっているが,一般規定を導入した場合,権利侵害者の抗弁として乱用されるおそれがある,と主張している。

一方,日本弁護士連合会は,迅速で適切な法的処理を可能とするため,権利制限の一般規定の導入に賛成し,3 類型については,これらの利用行為は権利者に特段の不利益を生じないものと考えられ,権利制限の対象行為とすることによって,権利侵害に該当しないことを著作権法上も明確化する意義は大きい,などと指摘している。

3 類型については,民放連は「範囲・基準が不明確なため,個別権利制限規定として明確化することが妥当」との立場であるが,NHKは3 類型の「利用行為を権利制限する一般規定を導入することに一定の意義は認められる」との立場をとっている。

同小委員会が最終的に意見をまとめる日程はいまのところ定かではない。

奥田良胤