メディアフォーカス

グーグルとベライゾンがネット規制を共同で提案,「ネット中立性」の議論が過熱

グーグルと米通信大手のベライゾンは8月9日,『オープン・インターネットに関する共同提案』を発表したが,この中でネットへの無線アクセスについて,すべてのコンテンツを平等に扱う「Net Neutrality(ネット中立性)」原則を適用しないことなどが含まれていたため,30万人分の抗議の署名がグーグル本社に届けられるなど,インターネットの利用と規制のあり方をめぐる議論が高まっている。

この問題に関して,これまでグーグルはコンテンツを提供する側の中心として,ネット最大の特徴であるコンテンツの平等な扱いを,ベライゾンやコムキャストなどのサービス・プロバイダー側に求めてきた。その後,FCC(連邦通信委員会)が各社と協議を行ってきたが,NYタイムズによると,協議が大詰めに近づいた段階で,突然,2 社による共同提案が発表されたという。ネット中立性を支持する市民グループからは「“Don’t be evi(l. 邪悪にならない)”をモットーとするグーグルに裏切られた」という声があがる一方で,メディア研究者からは「巨大企業は自社の利益確保が最も重要で,公共の利益が優先されると考えるのはナイーブ過ぎる」という意見も出ている。特にFCCへの批判は強く,業界の意向に配慮し過ぎず,規制監督機関として毅然として役割を果たすべきだという声が大勢を占めている。インターネット上に流れるコンテンツを誰がどのように決めるのか,ネットの本質に関わる問題をめぐって,業界,政府規制機関,連邦議会を巻き込んで,今後,議論は長期化する見通しとなっている。

柴田 厚