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視聴者視点による初のNHK 評価放送は合格,経営の信頼性は基準以下

外部委員による「視聴者視点によるNHK 評価委員会」(委員長・谷藤悦史早稲田大学教授)が2010年6月22日,初めての評価報告書を公表した。

委員会はNHK会長の諮問機関として09年4月に発足し,視聴者がNHKの活動にどのように期待を持ち,それらの期待がどの程度実現されたと考えているか,を基本的尺度として評価を行った。

委員会は評価にあたって,「放送の信頼性」と「経営の信頼性」を2本の柱とし,「放送の信頼性」に関しては,「独立性・公正さ」「質の高さ」「役に立つ」「親しまれる」「社会への貢献」の5つを評価指標に設定した。「経営の信頼性」に関しては,「誠実さ・透明性」「経済性・効率性・効果性」「変化への対応力・柔軟性」の3つを評価指標とした。

そして視聴者の意向を把握するために,全国で16歳以上の3,600人を対象に意向把握調査等を実施するとともに,視聴者から見えにくい経営面については,有識者ヒアリング,職員調査等を行った。

評価は5点評価で,1点は「期待値を大きく下回る状態」,3点は「期待値にほぼ応えている状態」,5点は「期待値を超えた先導的状態」である。

評価結果によると,「放送の信頼性」の評点は3.6点で,構成する5つの指標がすべて必要水準である「3」を上回った。

指標別では,「質の高さ」が最も高く3. 9点。「役に立つ」と「社会への貢献」が3.7点。「親しまれる」が3.4点。「独立性・公正さ」が3.2点だった。委員会は「独立性・公正さ」は公共放送として視聴者から信頼されるための生命線とも言える評価指標であり,この評価が相対的に低かったことをNHKは真摯に受け止める必要があると指摘している。

「経営の信頼性」の評点は2.5点で,視聴者の期待に応えているとは言い難い評価となっている。指標別では,「誠実さ・透明性」が2.7点で,受信料制度に対する視聴者の理解が順調に進んでいないと指摘している。また,不祥事によるNHKへの不信感は大きく改善されているが,「国民のための公共放送だから,みんなでその経費を負担する必要がある」という受信料負担の基本観が20代を中心にやや薄れていると危惧している。

「経済性・効率性・効果性」は2.5点。「変化への対応力・柔軟性」は2.3点で,改善のために,職場横断的な意思決定を早くすること,業務分担を見直すこと,組織の硬直化を防ぐこと,人材の育成を図ることなどの必要性を指摘している。

さらに委員会は,視聴者との接点の最前線である地域放送局の活動を重視し,「地域性に関する考察」として意見を述べている。そのなかで委員会は,地域放送に対する視聴者のニーズは「放送時間の量よりは質であり,内容としては地域情報の充実に対する期待感が強い」とし,その期待に応えるためには,業務と要員のアンバランスの是正が体制面での最大の課題であると指摘している。

答申を受けてNHKは,「放送の信頼性」については,今後ともさらに良質な番組の提供に努める,「経営の信頼性」については,改善に向けて組織の活性化などに努める,とコメントした。

奥田良胤