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仏「ル・モンド」紙左派系実業家へ売却

発行部数が低迷し,経営破綻の危機にあるフランスを代表する新聞「ル・モンド」紙はサルコジ大統領が推し進めた政府系の企業体ではなく,左派系の実業家グループに売却されることが6月28日,決定した。

1944年に創刊された日刊紙「ル・モンド」は40万部を超える発行部数だったが,最近はインターネットや無料の新聞の普及によって30万部程度に落ち込み,1億ユーロ(約110億円)の負債を抱え身売り先を探していた。

これに対して,フランスの高級ブランド「イブ・サンローラン」の創設者の1人,ピエール・ベルジュ氏ら左派系の実業家3人のグループと,電気通信事業者フランステレコムなどでつくる政府系企業体の両者が買収の名乗りをあげていた。ベルジュ氏は2007年の大統領選挙でサルコジ現大統領の対抗馬だった社会党のロワイヤル候補を支持していた。フランスのメディアは,ベルジュ氏らの動きを警戒したサルコジ大統領が6月上旬,「ル・モンド」の経営者をエリゼ宮に呼び,ベルジュ氏らのグループに売却しないよう圧力をかけていたと報じ論議を呼んでいた。

「ル・モンド」は会社の記者会が筆頭株主で,編集・経営の議決権を握っている。この記者会が6月28日,言論の自由を認め,人員削減を行わないことを条件に,左派系実業家グループへの売却を決め,サルコジ大統領が後押しした政府系企業体は撤退を余儀なくされた。

「ル・モンド」は一般的には,中立系日刊紙と言われているが,以前は中道左派寄りと言われていた。

新田哲郎