メディアフォーカス

米ピュリツァー賞,インターネット・メディアが初受賞

アメリカの活字ジャーナリズムで最も権威ある賞とされるピュリツァー賞が4月12日に発表され,インターネット上を主な発表の場とするオンラインメディアが初めて受賞した。

ジャーナリズムの14部門では,有力紙ワシントンポストが国際報道など4部門,ニューヨークタイムズが3部門を受賞した一方で,初めて非営利のオンラインメディア「プロパブリカ(ProPublica)」が調査報道部門を受賞した。プロパブリカは2年前に設立されたNPOで,デイリーニュースの取材は行わず,掘り下げた調査報道を専門とし,その内容をネットで独自に展開するほかに,新聞社やテレビ局にも提供している。財源の多くを寄付に頼り,大半の記者は各メディアで長年キャリアを積んだ実績を持つ。

受賞対象となったのは,医師の資格を持つ女性のシェリ・フィンク記者が執筆した記事で,2005 年のハリケーン「カトリーナ」の被災地で,避難できない病院患者を安楽死させた医師の判断や行為について検証した。今回の企画はプロパブリカとNYタイムズ・マガジンが共同で取材したもので,メディア企業の厳しい経営環境が続くなか,ピュリツァー賞事務局は「今後,報道機関同士の提携や協力はますます増えるだろう」と述べている。

ピュリツァー賞の理事会は,メディアの形態が多様化していることから,昨年からウェブ上で発表された記事も審査の対象に加えており,今回のプロパブリカの受賞は実力のあるネットメディアが,影響力を拡大していることを示している。

柴田 厚