メディアフォーカス

米人気司会者レノ,プライムタイムから撤退

~NBCのトーク番組をめぐる編成の混乱~

米NBCは昨年9月,夜11時半の看板トーク番組『トゥナイト・ショー』の司会を17年間務めたジェイ・レノを抜擢して,夜10時のプライムタイムに,米テレビ界では初めて月曜から金曜まで帯のトーク番組を始めた。しかし,視聴率が振るわず,系列局などの強い反発もあって半年余りで番組の中止を決め,レノは3月に古巣の番組に戻ることになった。

これまで夜10時台のテレビ番組は予算を十分かけたドラマなどが主流だったが,ケーブルや衛星,インターネットなどメディアが多様化するなかで地上テレビの存在感が相対的に低下し,不況も加わって広告収入が減っていた。なかでもかつて米テレビ界の雄だったNBCは,視聴率競争で4大ネットワークの中で最下位に甘んじていた。こうしたことからNBC首脳は,深夜の人気番組をほぼそのままの形で10時台に移し,制作費もドラマの数分の1ですむトーク番組を帯で編成することで,人気の回復と経費節減を目論んだ。番組は,開始当初は視聴率をとることができたものの,やがて視聴者から新味のなさを指摘されるようになった。そして,番組撤退を決定的にしたのは,レノに続いて夜11時から地域向けニュースを放送していた各地の系列局の声だった。レノの番組が盛り上がらないため,その影響を受けて11時のニュースも多くの局で視聴率が低下した。視聴者の意向よりも放送局側の都合を優先した今回の一件は,NBCにプライムタイムの新たな設計を強いるとともに,現在の地上テレビの苦境,新たなビジネスモデル作りの難しさを示す形となった。

柴田 厚