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地方新聞で拡大 ウェブ上の動画コンテンツ

青森県の東奥日報社は2009年11月11日から,ウェブ上でニュース映像などを配信する動画サイト「東奥NET テレビ」を開設した。

東奥日報社は,携帯電話向けの動画配信を07年に始め,08年10月には紙面を丸ごと配信する青森県外向け電子新聞サービスを月額2,100円で開始し,購読者には動画ニュースも配信している。

「NETテレビ」の立ち上げとともに09年11月からは,県内外を問わず,自由に見られるニュース映像の配信を始め,読者からの動画投稿の受付けも開始した。

受付けているのは2分程度の動画で,携帯電話からの投稿もできる。同社では,事件・事故の第一報を期待しているが,中心は地域のお祭りや季節の便りなどで,とくに若い人の関心を高めるため,地域の文化祭やクラブ活動の紹介など,これまでニュースとして報道されなかったものも積極的に受付けることにしている。同社の話によると,スタートから1か月の読者からの投稿は1日平均2本程度だという。

また,映像配信を充実させる一環として,太宰治生誕100年を記念して09年9月に五所川原市で上演された野外劇「津軽」(村田雄浩主演)の全編(約2 時間)を配信した。広告面では,紙面広告とテレビのコマーシャルのような動画広告をセットで掲載するケースもあるという。

東奥日報社は,今後インターネットが基幹インフラになれば,新聞報道のあり方も変化していくことが予想されるとし,将来に向けて,新聞離れが言われている若年層を取り込むために,実験的にさまざまなことを模索したいとしている。

日本新聞協会によると,動画配信に積極的に取り組んでいるのは,東奥日報社のほか,大分県の大分合同新聞,岡山県の山陽新聞,佐賀県の佐賀新聞などである。

このうち大分合同新聞では,「oitatv.com」内に,動画ニュース,未来の主役,おおいた味散歩,地域の話題,新商品・新製品の紹介などのコーナーを設けて,動画を配信している。また佐賀新聞は08年10月,若者を中心に1,000万人を超える登録者がいる動画共有サイト「ニコニコ動画」に,報道機関として初めて,公式チャンネルを開設した。

日本新聞協会が09年1月に行った加盟113社に対するアンケート調査では,回答のあった87 社のうち動画コンテンツを配信しているのは47社で,前年に比して5 社増えた。このうち地方新聞は37社となっている。

新聞協会によれば,動画は,自社のウェブで配信するだけでなく,地域のCATVと連携して,CATVで放送しているところもある。

動画サイトは広告を入れても単価が安く,経営的には利益を上げるには程遠い。経費を節減するため,動画撮影は原則として現場取材をした記者が担当しているという。

それでも,地方新聞が動画配信を試みるのは,第1に,地方紙のきめ細かい取材網を駆使して,地元テレビ局が取材できないエリアをカバーし,将来的に NHKも含めたテレビ局にニュース映像を販売すること,第2に,若年層の新聞離れが言われるなかで,ウェブを通じて新聞への若者のアクセスを増やしたいとの思惑があるからだという。

奥田良胤