メディアフォーカス

地上放送もハード・ソフト分離規律に融合法制で情報通信審議会が答申

通信・放送の融合に合わせた新たな法体系の検討を行っていた情報通信審議会(総務大臣の諮問機関)は2009年8月26日,答申を行い,地上放送についても新たにコンテンツ部分への認定制度を導入してハード・ソフト分離の規律体系とすることなど,現行の法体系を抜本的に見直すことを提言した。

通信・放送関連の法制度をめぐっては,デジタル化やブロードバンド化が進展するなかで,主に業種ごとに規律を設けている現行の法体系(放送法,電気通信事業法など9本の法律)では通信と放送の境界を超えたサービスへの対応が難しいとして,情報通信審議会が2008年2月,「通信・放送の総合的な法体系に関する検討委員会(主査・長谷部恭男東大教授)」を設け,法体系見直しの検討を行っていた。

答申では,これまでの法律を組み替えて,▽コンテンツ規律(番組制作などのソフト部分),▽伝送サービス規律(コンテンツと伝送設備を媒介する部分),▽伝送設備規律(無線局などの設備部分)の3つを軸に再編成し,規律を大くくり化することを求めている。

このうち地上放送(テレビ・ラジオ)は,伝送設備(無線局)の免許を持つ放送事業者が施設設置から番組制作までを手がけるハード・ソフト一致の規律体系となっているが,答申では,伝送設備への免許とは切り離して,コンテンツ部分(番組制作業務)に関する認定を行う制度を導入し,ハード・ソフト分離の規律体系に変えることを提言した。

コンテンツ規律に関しては,また,放送事業者に対し,放送番組ごとに報道や教育,娯楽といった番組の種別の公表を求める制度を導入することを提言し,ショッピング番組についてもこの制度での対応を求めるなど,新たな規制導入を盛り込んだ。

一方,コンテンツ規律の範囲については,インターネット上を流れる放送類似の通信を対象にすることには批判が多かったとして,規律の範囲を従来の放送にとどめるとし,インターネット上の違法・有害情報対策については,2009年4月に施行された青少年インターネット環境整備法で対応すべきとした。

このほか,答申では,伝送設備規律に関して,電波を有効活用できるよう通信と放送の両方に利用できる無線局の免許を新たに設けるとともに,免許を受けたあとに利用目的を変更することができる制度を導入することが適当とした。また,放送用などに割り当てられているものの,時間的・地理的な条件によってほかの目的にも使える電波の「ホワイトスペース」の活用に向けて,制度整備を行うべきとしている。伝送サービス規律については,現行の電気通信事業法を核として,制度の大くくり化を図ることが適当とした。

今回の法体系見直しをめぐっては,地上放送に関する規律をハード・ソフトに分けることによって,経営の厳しい地方局どうしで伝送設備を共有できるようになるといった経営面でのメリットが生じる一方,コンテンツ部分の認定制度が導入されれば,放送内容に関する行政の関与がこれまでより強まるのではないかといった懸念も存在している。総務省は,2010年の通常国会への法案提出を目指しているが,政権交代を実現した民主党が,どのような通信・放送政策を展開し,どのような規律のあり方を目指すかは,法体系見直しにも影響を与えうる焦点となる。

村上聖一