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石川県珠洲市と能登町の一部でアナログ放送終了リハーサル

地上デジタル放送完全移行まであと2年となった7月24日,能登半島の北端に位置する石川県珠洲市と能登町の一部で通常のアナログ放送を1時間休止する,放送終了リハーサルが行われた。総務省は対象地域の約7,500世帯のうち,CATV加入世帯やデジタル対応世帯を除く珠洲市内の約1,300世帯が放送休止の影響を受けたと推計している。

今回のリハーサルは,「2011年7月にアナログ放送を全国一斉終了するにあたり混乱が生じないよう,事前に小規模なエリアで実際にアナログ放送を終了することにより,アナログ放送終了にあたって生じ得る課題の抽出を行い,2011年の全国一斉終了の際の対策検討に役立てること」を目的に,総務省が主体となって全国で初めて実施された。

1時間の放送休止を前に,各戸にチラシを配布したり,アナログテレビ画面に字幕スーパーを出したりしてリハーサル実施についての周知が図られた。字幕は,2週間前の7月10日から22日までロールスーパーで1日4~6回,さらに前日の23日と24日当日は8回に増やし,固定スーパーで実施された。

放送が休止された24日午前10時から11時までの1時間,アナログテレビの画面にはブルーバックにリハーサル実施中であることを知らせる文言と,問い合わせ先として総務省石川県テレビ受信者支援センター珠洲支所(通称デジサポ珠洲)の電話番号が表示された。放送休止中,デジサポ珠洲には12件の質問や意見が寄せられたが,大きな混乱は見られなかった。質問内容としては,「今回の放送休止が1時間で終わるのか(5件)」が最も多く,その他「どうすれば地デジが見られるのか」,「リハーサルは明日もあるのか」,「チューナー設置に経済的支援があるのか」等の問い合わせが寄せられた。また,この時間帯に地元民放局で中継放送されていた「高校野球石川大会に孫が出場するため視聴できないのは困る」といった意見や,「アナログ放送を今後も続けて欲しい」という要望が寄せられた。

一方,デジタル放送推進協会(通称Dpa)では,今回のリハーサルに合わせてアンテナで直接受信している世帯を対象に受信状況の実態調査を行った。調査結果は8月以降公表予定となっている。

この調査に参加した電器店に聞いたところ,「チューナーなどの支援方法が決まらないため,説明も販売もやりづらい」と,国の施策の早期決定を望む声が上げられた。また,中継局受信からケーブルテレビ受信への移行が計画されている山間部などでは,ケーブルテレビ利用料などの個人負担が新たに発生することに対する不満の声が上がっている。そのほか,デジサポ珠洲や珠洲市が実施する地区ごとの説明会でも,「今後仮に新たな補助が決まった場合,既に購入した世帯と不公平になるのではないか」という声が上がるなど,様々な課題が浮かび上がった。

Dpaでは,今回のリハーサルで生じた問題などについてフォローアップ調査を行い,来年1月に予定されている2度目のリハーサル,そして2010年中に予定されているアナログ放送の先行停波に活かすことにしている。

小川浩司