メディアフォーカス

韓国,与党単独でメディア関連法を可決

7月22日,韓国の国会でメディア関連の3法案(新聞法,放送法,IPTV法)が可決された。韓国では,大企業や新聞社が地上放送局などの株式を持つことは法律で禁じられてきたが,株式の保有を解禁するための法改正をめぐって,昨年末から与野党が対立を続けてきた。保守系の与党ハンナラ党が,メディア環境の変化に対応し,産業競争力を高めるためには,法改正が必要であると主張するのに対し,野党民主党は,世論の独占・寡占を招き,民主主義の根幹である世論の多様性をおびやかすとして,法改正に反対の立場をとっている。

韓国のメディアは,大手新聞社が保守,地上放送局が革新といった構図になっていると指摘されることが多く,与党側が放送を掌握することで,現政権に有利な環境を整えようとしているとの見方が根強い。

国会では与野党議員の間で乱闘も繰り広げられる状況のなか,話し合いが行われてきたが,結局,妥協点を見いだせないまま,国会本会議において,ハンナラ党議員たちによる投票が強行され,メディア関連法が可決された。これで1980年の言論統廃合措置以来,29年間維持されてきた新聞と放送の兼業禁止規定がなくなることになった。

メディア関連法の可決で,2013年以降,大企業や新聞社は,放送業に進出する際,地上放送で10%,総合編成チャンネルと報道専門チャンネルについては30%を上限に株式を保有することが可能になるが,野党は依然反発を続けているうえ,国民の間からも議論が不十分であるとの声が出ている。

田中則広