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徳島・土地改良区横領事件報道BROが『報道ステーション』に「勧告」

放送倫理・番組向上機構の放送人権委員会(BRO)は2009年3月30日,テレビ朝日の『報道ステーション』が08年7月23日に放送した「徳島・土地改良区横領事件報道」に関して重大な放送倫理違反があったと認定し,再発防止策を講じるよう「勧告」した。

問題となったのは,『報道ステーション』が,徳島県の土地改良区で起きた事務員による6億円の横領事件の報道に関連して,背景に全国土地改良事業団体連合会(野中広務会長)が政治力によって,全国の土地改良区にばく大な税金を投入していると指摘し,評論家が「新たな事業を土地改良区に与えて存続させている」などと発言し,キャスターが「(補助金が)じゃぶじゃぶ使われているきらいがある」と伝えた報道で,野中氏が名誉等の侵害を訴えて,BROに審理を申し立てていた。

BROは,農水省出身の参議院議員の「励ます会」(07年4月)での野中氏の発言映像を使用した番組構成について,視聴者に「あたかも申立人が政治力で膨大かつ不要ともいえる事業を持ってきたという認識を生じさせ」,野中氏の社会的評価を低下させたと判断した。この表現方法は「極めて安易で,短絡的であるとの批判を免れない」。さらに,「じゃぶじゃぶ使われている」とのキャスター発言については,放送当時の裏づけ取材の範囲を超え,不適切な表現であると言わざるをえないと指摘した。BROは重大な放送倫理違反があったと認定し,テレビ朝日に「事実関係の裏づけ調査に基づく放送」を求め,再発防止策を講じるよう「勧告」した。

奥田良胤