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韓国地裁,MBC報道番組に「訂正報道」判決

韓国の裁判所は,米国産牛肉の危険性に関する報道で,大規模な抗議運動へと発展するきっかけとなったMBCの番組『PD手帳』に対して,訂正報道を命じた。

韓国政府・農林水産食品部の『PD手帳』に対する民事訴訟で,ソウル南部地方裁判所は,7月31日,農林水産食品部が訂正・反論報道を請求した7件のうち,2件については訂正報道を,1件については反論報道を行う義務があるとする判決を下した。

判決では,自力での歩行が困難な,いわゆる「へたり牛」を狂牛病感染の可能性が高いという趣旨で放送した点について,牛が起きられない理由には狂牛病のほかに様々な理由があり,座り込んだ牛が狂牛病に感染していた確率はほとんどないとみるべきで,訂正しなければならないとした。

また,韓国人が狂牛病に感染した牛を摂取すると「変異型クロイツフェルト・ヤコブ病(vCJD)」の発病率が94%に達すると報道した内容は虚偽だとして,訂正報道を命じた。

さらに,牛の特定危険物質部位(SRM)の分類基準は国によって異なるが,『PD手帳』では分類基準を明確にせず,月齢が30か月未満の場合には,5種類のSRMがそのまま輸入されるといった趣旨の報道をした点は,視聴者の混乱を招くため,反論報道によって正す必要があるとした。

一方,この問題をめぐる刑事訴訟については,ソウル中央地検特別捜査チームも7月29日,『PD手帳』の報道内容は事実をわい曲し,意図的に編集したものだとする中間捜査結果を発表,引き続き捜査を行っている。

田中則広