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米脚本家組合のストが終結

長期化していた米脚本家組合(WGA)のストライキが,2月12日収束した。今回のストは関係業界に大きな波紋を投げかけた。

映画やテレビ番組の脚本家,約1万2,000人が加盟するWGAは去年11月5日,全米映画テレビ制作者連盟(AMPTP)との交渉で,インターネットや携帯電話向けの二次配信による利益配当を巡って対立,ストに突入した。背景には1988年に設定されたテレビ番組や映画のVHSやLDなどへの二次利用の報酬分配率が低く設定されたままDVDが普及したため報酬が十分得られなかったという事情があり,WGA側には同じ轍を踏みたくないとの思惑があった。

ストの長期化によってトーク番組やドラマなど数多くの番組が再放送に差し替えられ,各ネットワークは脚本家なしで制作が可能な報道番組やリアリティショーで凌ぐことになった。

また翌シーズン向けに各ネットワークが3月~5月にかけて放送するパイロット番組も軒並み制作中止となったほか,映画のワーナーブラザーズは社員1,000人の一時解雇に追い込まれた。

さらに1月13日に開催予定だったゴールデングローブ賞の授賞式も中止となり,NBCによる「記者会見」形式へ変更されるという前代未聞の事態に発展した。

第80回アカデミー賞授賞式(2月24日)も一時は開催が危ぶまれたが,WGAは二次配信による利益配当の増額を盛り込んだ3年契約に暫定合意し,組合員による投票の結果,14週間続いたストが収束した。「放送と通信の融合」の影響が思わぬ形で現れたといえる今回のストだが,関係業界の損失額は 8,000万ドル(約85億円)に上るという試算も出されている。

米倉 律