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BSアナログハイビジョン18年間の放送に終止符

NHKのBSアナログハイビジョン放送が2007年9月30日に終了し,実験放送開始以来,18年間にわたる放送に終止符が打たれた。

アナログハイビジョンは,衛星放送が本格的な放送を開始した1989年の6月3日,NHKが世界に先駆けて定時実験放送を行うことから始まった。画像圧縮技術にはNHKが開発したMUSE方式が使われ,当初,衛星第2放送を使用して1日1時間の放送が行われた。1991年11月には,NHKや民放,家電メーカーなどが参加したハイビジョン推進協会によって1日8時間程度の試験放送が開始され,番組は主にNHKと民放が制作して推進協会に提供した。当初は同じ番組の繰り返しも多かったが,次第にスポーツ中継が増え,スポーツ番組は全体の30~40%を占めるまでになった。

1994年2月には,当時の郵政省放送行政局長が,MUSE方式を用いた放送を見直し,早急にデジタル方式に転換する考えを述べたことで一時波紋が広がったものの,アナログ放送は継続され,同年11月からはNHKと民放が曜日と時間を分け合って担当する形で実用化試験放送が始まった。番組は各局が得意分野を生かす形で,スポーツや映画,音楽,ドキュメンタリーなどが総合的に編成された。また,MUSEデコーダーを内蔵したハイビジョンテレビもアトランタや長野のオリンピック開催に合わせて普及が進み,出荷台数の累計は2000年には83万台余りに達した。

その後,放送のデジタル化に向けた検討が進む中,2000年にBSデジタル放送を開始することが決まったことから,アナログハイビジョン放送の扱いについても議論され,放送を2007年までに終了することが放送普及基本計画に盛り込まれた。そして,BSデジタル放送の開始以降は,それまでのテレビの購入者に配慮しながらデジタル放送へ円滑に移行するとして,NHKのBSデジタルハイビジョンと同じ内容の放送を行っていた。

放送終了時点で,MUSEデコーダー内蔵のテレビを利用しているのは,推定で50万世帯程度に上り,NHKではこれまでスポット番組を放送したり,終了を知らせるスーパーを流すなどして告知を行ってきた。今回の放送終了に伴い,これらのテレビで引き続きハイビジョン放送を受信するためには,デジタルチューナーを設置する必要がある。

一方,放送終了で空いた周波数帯域では,2007年12月1日から,3社がデジタル放送を開始することになっている。新たに開局するのは,ビックカメラなどが出資する日本BS放送の「BS11デジタル」と,三井物産が出資するワールド・ハイビジョン・チャンネルの「TwellV(トゥエルビ)」で,このほか,すでにBSで放送を行っている映画専門の有料放送「スター・チャンネルBS」についてもこの周波数帯域を使うことで新たにハイビジョン化される。

アナログハイビジョン放送をめぐっては,放送のデジタル化が進む中,NHKが開発したMUSE方式が国際的な規格として広がりを見せることはなかった。その一方で,番組制作や技術開発などでの蓄積がBSデジタルや地上デジタルでのハイビジョン放送の基礎となっているとする評価もあり,テレビ放送の発展に一定の役割を果たして,実験放送開始から18年にわたる放送を終えた。

村上聖一