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台湾衛星大手のTVBS,暴力団員の“脅迫ビデオ” 撮影・放送で社長が辞任

台湾の衛星番組事業者大手で香港のTVBの系列会社であるTVBSが3月26日,「特ダネ」として,暴力団員が拳銃を手に他の暴力団員を名指しし「見つけたら殺す」と脅す様子を撮影したビデオを放送した。この暴力団員は他の事件で手配中だったこともあって,他のテレビ局数社も警察から提供を受けた一部の映像を放送,大変な反響を呼んだ。TVBSでは当初ビデオの入手方法について,支局の郵便受けに投函されていたと説明していたが,28日の夜になって急遽声明を発表,問題のビデオはTVBSの支局の記者が自ら撮影したことが判明したため,この記者と上司にあたる別の記者の二人を免職にしたことを明らかにした。当局では記者が暴力団員と共犯関係になかったかどうか捜査している。この問題について媒体改造学社などのメディアNGOは29日,「視聴率を追い求め自作自演もいとわない各テレビ局の体質に問題がある」と厳しく批判する声明を発表,全容の調査・公表と社長自身への処分を行うよう求めた。放送・通信を管轄するNCC=国家通信放送委員会では30日,ビデオを放送したTVBSの総合チャンネルとニュースチャンネルに対し,衛星ラジオテレビ法36条に基づいて各100万元(約350万円)の罰金を科すと共に,同法29条に基づいて一定期間内の改善を求めた。これを受けてTVBSでは4月2日,李濤社長が辞任することを明らかにした。台湾のテレビ界は2,300万人の人口に対しテレビチャンネルが150もある著しい過当競争状態にあり,同様の不祥事が続発しているのが現状だ。

山田賢一