メディアフォーカス

『発掘! あるある大事典II』ねつ造問題民放連,関テレの会員活動停止処分

民放連は2007年2月15日の理事会で,1月7日放送の『発掘! あるある大事典II』で架空の証言や虚偽のデータが使用された問題(本誌3月号「メディア・フォーカス」参照)で,関西テレビの会員活動を当分の間停止する処分を決めた。会員活動停止処分は除名に次ぐ厳しい処分で,過去に3局がこの処分を受けているがCMの間引き等が理由で,番組内容をめぐっては初のケースである。

民放連は「番組制作会社に委託して制作放送された番組であっても同社の放送責任は大変重く,視聴者・広告主の放送番組に対する信頼を大きく損なう結果となったことは,誠に遺憾である」として,処分に踏み切った。

『発掘! あるある大事典II』では,1月7日放送分だけでなく,過去に放送された番組でもねつ造疑惑が指摘され,関西テレビは2月7日に原因究明の社内調査報告書を総務省に提出したが,報道機関には公表しなかった。

総務省は,制作を委託した孫請け会社に一方的に責任を押しつけており原因究明が不十分である,として再報告を求めた。

関西テレビの事後の対応が批判を招き,菅総務大臣が2月9日の国会審議で,再発防止に向けて番組内容にねつ造等があった場合に放送局を処分するための法改正が必要だと答弁するなど,放送局を規制する政治的な動きを加速させる結果となった。また,毎日新聞が2月11日の社説で「メディアとしても失格だ」と書くなどメディア界でも批判が拡がった。

民放連の厳しい処分は,このような状況を受けて,放送界が自浄機能を発揮しないと公権力の介入を招きかねないとの危機感に基づいて行われた。

事態を深刻に受け止めた民放連は同日,放送倫理の確立に向け「理事会決議」を行った。

決議では,『発掘! あるある大事典II』問題が「視聴者をはじめ,科学分野の研究者や広告主の,民間放送に対する信頼を裏切る事態を招いた」とし,「われわれは,今回の事態を重く受け止め,業界全体としてあらゆる角度から事実関係を検証し,議論を深め,番組のチェック体制を再点検するとともに,再発防止に向けて,放送倫理を確立することが急務であると考える。一方,放送の言論・表現活動に対して無用な公的規制を招いたり,番組制作現場を萎縮させることがあってはならない」とし,(1)放送人として社会的使命・責任の自覚,(2)社会生活に役立つ正確な情報提供,(3)番組の審査・チェック体制の再構築,(4)番組制作環境の整備,(5)放送人育成のための研修制度の強化,などについて,改めて真摯かつ積極的に取り組むことを表明した。

そして,放送倫理向上のために実施する具体的な取り組みを示した「民放連施策大綱」を発表した。このような措置を民放連がとったのは初めて。異例のことである。

それによると実践項目は,(1)研修制度の確立,(2)「放送倫理」の徹底,(3)過剰な演出・表現防止のための制作環境の整備,(4)実効性のある番組チェック体制の整備,(5)番組ジャンル別事例の蓄積・研究,(6)視聴者に見える「放送倫理向上策」の実践,となっている。

民放連では,放送倫理の徹底や過剰な演出・表現防止については,民放各社だけでなく,制作プロダクションにも呼びかけることにしている。

奥田良胤