メディアフォーカス

米ニューズ社,衛星放送事業から撤退へ

米メディア企業大手のニューズ社(ルパート・マードック会長)は12月22日,同社が保有する米衛星放送最大手のディレクTVの持ち株をメディア大手のリバティメディア社に譲渡することで合意したと発表した。リバティメディア社が保有するニューズ社の株式16.5%とニューズ社が持つディレクTV株 38.5%とを交換し,リバティ社は3つのスポーツ専門チャンネルと5億5,000万ドルを受け取るというのが合意の内容である。ニューズ社はディレク TVを傘下としてからわずか3年で衛星放送事業から撤退することになった。

背景には,アメリカの有料テレビ市場ではケーブルテレビが大きなシェアを持ち,ここ数年は電話事業者の新規参入も相次いでいることから衛星放送事業の今後の発展に限界があるとの観測がニューズ社にあったと言われる。またニューズ社は,かねてからリバティ社がニューズ社株の保有を強化してきたことにも脅威を感じ,1年以上に渡って自社株の買い戻しについて協議を続けてきていた。

ニューズ社は,地上波のFOXネットワークやケーブルテレビのFOXニュースチャンネル,映画の20世紀FOXなどを傘下に置くアメリカでも有数のメディア企業だが,最近ではインターネット関連分野にその事業の中核を移行させつつある。2005年7 月には全米で5,000 万人の利用者がいるSNSサイト「myspace.com」を買収したほか,グループの制作する映画やテレビ番組をインターネット配信する事業も去年から開始している。今回の合意で,ニューズ社のインターネット分野での展開がより本格化すると見られる。

米倉 律