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韓国テレビ国際放送「KBS WORLD」日本のケーブルテレビに進出

9月29日,KBSは日本に設立した子会社のKBS JAPANを通して,KBSのテレビ国際放送KBS WORLDがケーブルテレビ最大手のジュピターテレコム(J : COM)のデジタルサービスで基本チャンネルにより放送されることになったと発表した。これにより2003年7月にスタートしたKBS WORLDは,10月1日より,東京や大阪など日本の主要都市のケーブルテレビで追加料金を払うことなく24時間の視聴が可能となった。KBS WORLDはすでに今年4月,CS放送スカイパーフェクTV!に進出しているが,その加入者45万世帯と今回のJ : COM加入者85万世帯を合わせた計130万世帯が視聴可能になった。

KBS WORLDを日本で運営するのはKBS JAPAN (2005年10月設立)である。編成の基本方針を「韓国を日本に正しく伝え,民間レベルでの日韓の相互理解を深めること」に置いており,KBS本社からの4チャンネル(「KBS-1」「KBS-2」「KBS WORLD」「KBS drama」)を24時間受信し,日本の視聴者の好みに合いそうな番組を選んで独自の編成を組んでいる。ドラマを中心にドキュメンタリー,ニュースなどを放送しており,ドラマは10年前のものから今年公開されたものまで多岐にわたる。2006年の新作としては,1945年から1950年の朝鮮戦争勃発直前までの時期,イデオロギーに関係なく自由と平等の国を作ろうとした若者たちの姿を描いた『ソウル1945』や,軍人家庭の4姉妹,トクチル,ソルチル,ミチル,チョンチルのそれぞれの姿を通して,現代女性の様々な生き方を描いた『噂のチル姫』などを放送中である(2006年10月末時点)。なお全番組の 76%に日本語字幕を付けており,字幕制作作業は日本国内で行っている。

スタートから3年半になるKBS WORLDであるが,このところ急速に海外市場へ進出している。2005年にはアメリカの衛星放送大手エコスターと契約を結び,全国185万世帯550万人を対象にした基本チャンネルで毎日24時間放送をスタート,またフランスでも衛星放送大手TPS(当時)と契約を結び,全国放送を開始した。2006年 6月からは中東の22か国,約2,000万世帯を対象に放送を始めたほか,東南アジアにも本格的に進出しており,9月からはフィリピンで,また日本進出と同じく10月からはシンガポールでもケーブルテレビを通しての放送を開始している。その結果,KBS WORLDの視聴可能範囲は,日本,アメリカ,フランスなど37か国3,147万世帯(2006年9月末時点)に広がっている。

韓国のテレビ国際放送については,KBS WORLDの他にも,国外の韓国人社会に対して,自社のコンテンツの売り込みを図るための商業目的による放送がニュース専門チャンネルYTNなどにより行われている。また文化観光部(省)傘下の財団法人アリラン国際放送が運営する放送「arirang」は国家広報を目的とした英語の24時間放送を行っている。今回,KBSは日本最大のMSO(多数のケーブルテレビ局を運営する事業者)J: COMと契約したことで,ネットワーク強化を大きく進展させた。そこには韓国の国内放送のみならず,国際放送についても主導権を確保し,近い将来,アジアを代表する国際放送局として優位に立とうとするKBSの戦略が窺える。

田中則広