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韓国SBSによる五輪・W 杯放送権単独契約で他社が猛反発

8 月2日,国際オリンピック委員会(IOC)は,2010年の冬から2016年の夏にかけて開かれる4 つのオリンピックの韓国と北朝鮮での放送権を,韓国の商業放送局SBS と単独契約することで合意したと発表した。翌3日,SBS もアメリカ・ロサンゼルスにある子会社「SBS インターナショナル」が放送権を購入したとし,KBSやMBC などに放送権の再販売をする方針であることを明らかにした。

4つのオリンピックの放送権料は合計7,250万ドル(約83 億円:1 ドル=115 円換算)である。内訳は2010年のバンクーバー冬季大会と2012 年のロンドン夏季大会が3,300 万ドル,開催地未定の2014 年冬季大会と2016年夏季大会が3,950万ドルとなっている。これは2002 年から2008年のオリンピック放送権料の倍以上の金額に相当する。

韓国ではこれまで,巨額な放送権料の支払いが必要となる世界規模のスポーツイベントについては,地上放送局3 社(KBS,MBC,SBS)が共同参加した「コリアプール(Korea Pool)」を通じて放送権を共同購入してきた。

今年5 月30日には3 社の社長が,外貨流出を抑えて国家の利益を守るためにも交渉の窓口を一本化し,いかなる個別交渉もしないとする合意書まで交わしている。

今回,SBS の単独契約が伝えられるとKBS とMBC はSBS非難を開始した。KBSは3 日,『ニュース9』で「3 社の社長合意に基づき,局長たちがスイスに出向いてIOC側と交渉し,最近まで6,300万ドルの金額を提示していた。

しかしSBS はSBS インターナショナルを間に立て,950万ドルを上乗せして独占契約を結んだ」と伝え,国益を無視した闇取引であると非難した。MBCもこの日,『ニュースデスク』を通じて「経済的に豊かな日本がジャパン・コンソーシアムで対応してきたというのに,その一方で我々は,視聴率競争に目がくらんだある放送局の独占欲によって巨額の外貨流出を引き起こした」と報道した。

これに対してSBSは5日,『8時ニュース』で「最近の流れを考えると,価格があまりに高いとする主張は根拠に乏しい」として国益には反しないと伝え,9日には「KBSとMBCは以前からコリアプールの合意を破ってきた」として,1996年のKBSによるサッカーのアジアカップ単独契約や1997年のMBCによるサッカー・ワールドカップ(W杯)のアジア予選単独契約などの事例を挙げて,コリアプールはすでに有名無実化していると反論した。

SBSとKBS・MBCの対立が続く中,7日にはオリンピックに続いて2010年と2014年のW杯国内放送権についても,SBSインターナショナルがアジア地域での再販売権を持つ日本の電通との間で単独契約を結んだとのニュースが伝えられた。放送権料は推定1億3,000万ドル(約150億円)で,2002年と2006年のW杯放送権料の倍以上の金額となり,オリンピック同様,大幅な価格の上昇となった。

韓国の地上放送局では後発のSBSが他社との競争を勝ち抜くためには,スポーツの分野でも独自色を打ち出す必要があり,そのためにはコリアプールの破棄もやむを得ないとの判断があったとする見方もある。今回の動きにより,これまで放送権を共同購入してきた日本などへの影響も懸念されている。

田中則広