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欧州委,オランダ公共放送に過剰収入の返還を要求

欧州委員会は6月22日,オランダ政府が1994年から2005年にかけて公共放送NOSに対して与えた財源が公共サービス放送の実施に必要な額を上回っていたとして,NOSに対し7,630万ユーロ(約111億円)と利息をオランダ政府に返納するよう命じた。

オランダの公共放送は,番組を制作する約20の非営利の放送団体と,それらに放送時間を割り当てるNOSからなり,政府交付金と広告収入を財源としている。この財源制度が市場の競争を歪めているとして,2002年と2003年にオランダの商業放送が苦情を申し立てたのを受け,欧州委の競争総局は2004 年2月に正式な調査を開始していた。なおオランダの受信料制度は2000年1月に廃止されている。

調査の結果,欧州委は,各放送団体が1994年から2005年にかけて通常財源のほかに政府から受けていた追加交付金のうち,7,630万ユーロが公共サービス放送の実施に必要な額を越えていたと判断し,政府への返納を求めた。

EC条約は,加盟国による企業への資金補助や優遇措置(国家補助)が市場競争を阻害する恐れのある場合,これを禁止している。さらに欧州委は2001年,「公共放送に対する国家補助ルールの適用に関する通達」の中で,公共放送の公的財源が公共サービス任務に必要な額を越えることで,公正な市場競争を歪めてはならない,という原則を確認している。

欧州委が公共放送に過剰分の返納を求めたのは,2004年5月のTV 2/DANMARKのケースに続いて2回目である。

杉内有介