メディアフォーカス

国民投票法案与党がメディア規制を断念

憲法改正の具体的な手続きを定める国民投票法案の与党案に,メディアへの規制やメディアに自主規制を求める内容を盛り込むことを自民・公明の与党が断念した。

国民投票法案におけるメディア規制は,2004 年12 月の与党案では「公職選挙法」が準用され,「虚偽の事項を記載し,または事実をゆがめて記載するなど表現の自由を濫用して国民投票の公正を害してはならない」との規定が盛り込まれていた。しかし,メディア側が反発し,野党第1 党の民主党も反対した。このため,与党は2006 年4 月に「虚偽の事項を報道し,または事実を歪曲して記載するなど表現の自由を濫用して国民投票の公正を害することのないよう,自主的な取り組みに努める」と,メディアに自主規制を求める内容に変更し,国民投票の報道に関する基準の策定や有識者による基準策定機関の設置を求めることとした。

ところが,自主規制についても,NHK も加盟する日本新聞協会や日本民間放送連盟が強く反対し,たとえ配慮規定であってもいったん条文に盛り込まれると拡大解釈され過剰反応を招くおそれがある,憲法改正という重要問題では国民に十分な情報や評論を伝える必要があり報道機関に新たな規制は不要である,との意見を相次いで表明した。

こうしたメディア側の動きを受け,さらに法案審議に際しては民主党との共同歩調を取りたいとする与党は,2006年5月,国民投票法案にメディア規制を盛り込むことを断念した。

奥田良胤