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独公共放送,受信料に関し憲法裁提訴で足並み揃う

公共テレビのZDF は,2005年4月に発効した受信料値上げの手続きが違憲だとして,各州首相を相手どり,連邦憲法裁判所に提訴すると3月6日に発表し,13日には公共ラジオのドイチュラント・ラジオもこれに続いた。ARD はすでに去年10月に提訴を決めており,これでドイツの公共放送の足並みが揃った。

争点となっているのは,受信料の値上げ額を決定した際,独立審査機関である「公共放送の財源需要の審査委員会」(KEF)が,2005年1月から受信料を月額1.09 ユーロ値上げすべきと答申したにもかかわらず,各州政府が不況を理由に値上げ額を0.88 ユーロに抑え,実施を4月に延期したことである。

この各州首相の対応について,公共放送側は,理由づけが不十分としている。受信料額の決定手続きについて定めた「放送財源州間協定」は,KEF の答申を変更する場合は十分な理由が必要,としている。この規定は,「受信料額の決定手続きは,州政府から十分に独立していなければならない」とした 1994年の連邦憲法裁の判決にもとづいて法制化されたもの。公共放送側は,今回正当な理由なくKEF 答申が変更されたことで,憲法に保障された放送の自由が侵害され,公共放送の政府からの独立性が損なわれたとしている。

公共放送側は,今回の憲法訴訟のなかで,受信料の問題と関連して,デジタル放送や放送と通信の融合など,放送をめぐる状況が激変する中での公共放送の任務と役割について,連邦憲法裁が判断を下すだろう,と期待を述べている。

杉内有介