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米アナログテレビ放送は2009年2月終了へ

~デジタルテレビ移行諸策で上下両院が合意~

アメリカ上下両院は,2005年12月19日,地上波アナログテレビ放送を終了する期限を 2009年2月17日とすることなどデジタル関連諸策で合意し,これが下院の予算関連一括法案に盛り込まれた。これまで2006年末,もしくは視聴世帯の 85%以上がデジタル受信機を購入した時と定められてきたアナログ放送停止時期が2年余り延長されたものの厳密な期日となった。

2005年,議会では,アナログ放送をいつ停止するのか,また停止するに当たってアナログテレビ世帯でもデジタル放送を視聴できるための外付けデジタルチューナーの購入をどの程度補助すべきか,が大きな焦点となった。デジタル受信機の普及の遅れから2006年末という期限に現実性が無いことをFCC(連邦通信委員会)も認めていた。貧困層にとって高価なデジタルテレビの購入は難しい以上,補助金を避けてアナログ放送停止はできないことを議会も認めることになった。 2005年11月,上院は2009年4月7日,下院は 2008年12月31日を期限とする法案をそれぞれ可決した。また補助金についても,上院がアナログ世帯全てを対象として30億ドルとしたのに対し,下院は9億9千万ドルとし早期に対応した視聴者のみとする限定されたものだった。このため上下両院協議会で調整が進められ,アナログテレビ終了の日を中間の 2009年2月17日とする妥協案がまとまった。また,補助金も間を取って,まず9億9千万ドルを当てさらに足りないと商務省が判断すれば総額15億ドルまで拡大することが出来るようにした。外付けデジタルチューナーの価格を50ドルと想定し,認定された世帯に 1台につき40ドルのクーポンを最大2枚まで配るというものだ。ただし,この補助金では必要なデジタルチューナーの半数程度しか補助できないとする批判もある。

デジタル放送関連の合意を盛り込んだ予算関連一括法案は,12月19日の下院,そして21日の上院と,いずれもほかの事項での民主党の反対が強かったためぎりぎりで可決した。デジタル放送と無関係の項目で一部上院側の修正が行われたため,1月末にもう一度休会明けの下院で審議され可決される必要がある。

アナログ放送停止時期や,補助金のほかに予算法案に盛り込まれた諸策は以下の通りだ。デジタル化で返還される予定のアナログ周波数を競売する期日を 2008年1月28日と決め,この競売では100億ドルの収入が見込まれるとしている。このうち約74億ドルは,赤字で悩む連邦政府の一般予算の収入補てんに使われるが,その一部は,アナログテレビ終了告知のための広報に500万ドル, 2001年の9.11事件で世界貿易センタービルが倒壊してデジタル送信アンテナを失ったニューヨークで,当面代わりのエンパイヤステートビルからのデジタルテレビ放送を強化する費用に3,000万ドル,それにテロや災害の緊急通信の強化費10億ドルなどに使われる。

今回のデジタルテレビ関連の合意では,放送事業者が強く望んでいたデジタル放送の全帯域ケーブル再送信(デジタルマストキャ リー)は実現せず,今後の課題となる。また,1996年の改正以降,10年の節目を迎える「通信法」の手直しも同様に新年度以降の課題として残されることになった。

池田 正之