メディアフォーカス

ライブドアとフジテレビ,和解

ライブドアとフジテレビジョンは2005年4月18日,資本提携および業務提携等について基本合意に達したと発表,同日,ニッポン放送とともに共同記者会見を開いた。2月8日に始まったニッポン放送の株式を巡る両者の争い(本誌5月号フォーカスに詳述)は,長期戦の様相から急転直下和解が成立,70日目にしてようやく収束を迎えた。株主総会への株主提案が総会の8週間前までに行われる(商法第232条の2第1項)ことから,ライブドアとフジテレビは,6月下旬開催予定のニッポン放送の株主総会に向け,期限と目される4月末を前に,お互いが譲歩した形となった。

基本合意の概要は,[1]ライブドアグループが,その保有するニッポン放送の50%超の株式すべて(1,640万180株)を1株6,300円でフジテレビに譲渡する,[2]フジテレビが,ライブドアの実施する第三者割当増資の440億円を引き受けてライブドアに資本参加する,[3]フジテレビとライブドア,それにニッポン放送の3者により「業務提携推進委員会」を設置し,放送とインターネットとの融合領域における個別の業務提携事案について協議・検討を進める,の3点が柱となっている。

フジテレビからライブドアに支払われる金額は総額約1,473億円となるが,ライブドアは,同社が強く求めていた株式の交換によるフジテレビへの資本参加は果たせなかった。

まず,和解に向けて最大の争点となった,ニッポン放送株の譲渡価格についてである。フジテレビは,買い受けに際し,ニッポン放送株の公開買付け(TOB)に応じた株主に配慮してTOB価額の5,950円を主張したが,最終的には,ライブドアの取得価格を考慮し,350円を上乗せした1株6,300円で決着した。

具体的には,フジテレビが,ニッポン放送株の32.40%(1,062万7,410株)を保有するライブドアの孫会社「ライブドア・パートナーズ」(従業員数0名,2004年10月19日設立)を,総額約670億円(負債込み)で5月23日に買収する。仮に,フジテレビが,ライブドア側から株式だけを購入する場合には,ニッポン放送の株主総会に向けた議決権が3月末で確定しているために議決権がライブドア側に残り,議決に際しては委任状が必要となるが,会社ごと買収することで,議決権はそのままフジテレビに移転する。フジテレビは,ニッポン放送の株式の既保有分36.47%(1,196万1,014株)と合わせて68.87%(2,258万8,424株)を保有する筆頭株主となり,同放送はフジテレビの子会社となる。フジテレビは,もともと同放送の子会社化を目指して1月18日に開始した同放送株のTOBの目的が,当初のシナリオ通りに達成できることになる。

さらに,フジテレビは,ニッポン放送を9月1日付けで出資比率100%の完全子会社とする方針を明らかにしている。ニッポン放送の株式が上場廃止となることから,フジテレビは,同放送が行う自社株式の公開買付けによる償却とともに,同放送株の残りすべてについて,「産業活力再生特別措置法」を利用し,少数株主の利益にも配慮した1株につき 6,300円の金銭による簡易株式交換方式で取得するとしており,ライブドアが保有する577万2,770株(17.60%分)も同様に扱われ,約364 億円が支払われる。従って,フジテレビが,ニッポン放送株全株をライブドア側から買い取る経費は,総額約1,033億円となる。

次に,ライブドアが実施する第三者割当増資については,普通株式1億3,374万株を1株につき329円で5月23日に発行し,そのすべてをフジテレビが 440億円で引き受けて資本参加するもので,これによりフジテレビは,ライブドア株の12.75%を保有する,堀江貴文社長(21.06%)に次ぐ,第2 位の株主となる。資本参加について両社は,「業務提携の一環として行われるものであり,フジテレビがライブドアに対して一定の資本関係を保持していることが,業務提携の効果を引き出すために必要であると判断した」としている。

なお,同株式に関しては,フジテレビは2007年9月末日まではライブドアの事前同意なしに譲渡・貸株などの処分を行わない条件が付けられている。また,出資が15%未満となったのは,フジテレビがライブドアの株式の議決権の15%以上(20%未満)を保有し,かつ,財務,営業,事業の方針決定に重要な影響を与えると認められる場合(影響力基準),ライブドアはフジテレビの関連会社(連結財務諸表規則第2条)として持分法が適用されるため,それを避ける狙いがあるとみられる。

最後に,業務提携に関しては,6か月以内に成果を出すことを目指し,具体的な内容の検討がフジテレビ側の主導で進むことになる。業務提携の有りようについては,検討する方向性が明らかでなく,これからの展開が不透明な状況となっているが,4月22日には今後の協議の進め方を話し合う初会合が開かれた。ライブドアは,堀江社長が2月8日の記者会見で述べた,フジサンケイグループと提携する相乗効果によってライブドアのポータルサイトへの集客力を高めるという目標に向かっては,一歩前進できたといえよう。

東郷 荘司