メディアフォーカス

仏地上デジタル放送,3月31日放送開始

フランスの地上デジタル放送は3月31日に無料チャンネルの放送が開始されることになった。各事業者の希望を入れたもので,規制機関のCSAが 2月3日に発表した。現在アナログで放送されているTF1,F2,F3,F5,ARTE (F5とARTEは同一チャンネルで時間帯を分けて放送しているがデジタルではそれぞれ独立した24時間チャンネルとなる),M6の6チャンネルに加えて,新たにF4(Festivalが改称),LCP(議会チャンネル),Direct8,NRJ12,NT1, TMC,W9(M6 Musicが改称)の7チャンネルが加わり,さらに有料チャンネルのカナル・プラス(無料放送の時間帯のみ)が加わって,計14チャンネルが放送される。なお,いくつかのチャンネルが改称したのは,割り当てられた 1~14のチャンネル番号に関連させたため。放送はパリ(3か所),リヨンなど 12都市・地域の17の放送所から送信され,人口の35%がカバーされる。有料チャンネルの放送開始は9月以降で,新たに32の放送所からも送信され,人口の50%がカバーされる。最終的なカバー率は85%となる。

本放送開始に先立って,エッフェル塔からの実験放送がすでに1月17日から始まっている。既存チャンネルを放送してデコーダーやアンテナなどの受信状態をチェックするためで,有料チャンネルも含め,合計で22チャンネルが実験放送を開始した。一部のチャンネルではHDTV放送が可能なMPEG‐4方式の実験も行われている。

ところで,昨年10月にコンセイユ・デタ(国務院)が計6チャンネル(無料チャンネル1と有料チャンネル5)の免許を取り消したため,CSAは12月に 6チャンネルの免許公募を開始した(無料チャンネルと有料チャンネルの数は未定)。ところが2月8日にカナル・プラス・グループがCuisine TV(昼間)とComedie!(夜間)の1チャンネル分の免許を返上するとCSAに書簡で通告した。さらに14日にはラガルデール・グループが Match TVの免許を返上したとCSAが発表した。いずれも有料チャンネルだが,放送経費が高いためという。

これを受けてCSAは15日,免許公募の締切日を2月18日から3月11日に延期するとともに,公募チャンネル数を6から8に変更した。選考結果は5月10日に公表され,6月7日に免許が交付される。

一方,TPS Starは5月からMPEG‐4方式によるHDTV放送を開始すると発表しているが,それには,地上デジタル放送の放送波の規格と受信機器に関する2つの政令を改正する必要がある。政令は地上デジタル放送でMPEG‐2の採用を義務づけているためである。政府は3月2日,政令の改正案を公表し,意見公募を開始した。意見提出の締め切りは3月31日とされている。

また携帯電話による受信を導入する動きも出てきた。1月6日,CSAの地上デジタル放送作業グループが,実験を希望する企業グループのオーディションを行った。企業グループにはカナル・プラス,Nokia,送信事業者のtowerCast,携帯電話のSFRが参加している。企業グループは4月からパリで 9か月間の実験を行う予定である。

豊田 一夫