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仏,受信料制度を改革

フランスの議会は12月22日,2005年の政府予算を定める 2005年予算法を可決,成立させた。この予算法は,その第41条で 租税一般法典などを改正する受信料制度改革を規定しており, ここ数年来の受信料制度の改革が完了した。

今回の改革の最大の特徴は,受信料が,2005年から住居税と 一括して徴収されることになった点にある。このため,約1,000人 ほどの受信料徴収官によって行われてきた徴収の経費が大幅に 削減される。これら徴収官は,6か所の地方徴収センター(パリを 含む北部地方はリルにあるセンターが担当)に配属されており, 現勤務地のまま,財務省の他の業務に就くことになる。また, テレビ台数や別荘・セカンドハウスの有無に関係なく,今後は 世帯単位で課税される。これは,住居税と受信料で異なっていた 課税単位や免除の要件が,基本的に住居税の制度に統一されたため である。なお受信料局には地方センターに所属し,各地に駐在して 不払いの監視などを行う約400人の監察官がいるが,これらはその まま業務を続ける。

徴収の方法は,まず,所得の申告用紙に,テレビ所有の有無を 申告する欄を設ける。そして,住居税納入の際,受信料課税対象者の場合は, 納入通知書で住居税額と受信料額が合わせて通知されることになる。

政府は当初,1年前の2004年予算法案で,租税一般法典を改正し, この法典に税金としての受信料制度を盛り込もうと試みた。しかし, 予算法案の議会審議の過程で,不払い摘発のため,有料テレビ事業者 (カナル・プラス,衛星,ケーブル)に加入者名簿の提出を義務 づけようとする点が,個人情報保護との関係で問題になった。結局議会は, 検討には時間が必要として,暫定的に1年間は税金として受信料を 徴収することとし,受信料に関する改革を先送りした。

フランスでは受信料は,これまで財務省の受信料局が徴収 してきた。もともと,戦前のラジオ放送の初期から,受信料は政府が 徴収していたが,戦後になって,公共放送機関に受信料局が移され, 公共放送機関が徴収するようになった。しかし,フランス放送協会 (ORTF)が1974年放送法によって7分割された際に,受信料局は財務省に 移された。しかし,財務省に税金を徴収する部門と受信料を徴収する 部門が並存することは,非効率的だという批判が絶えなかった。 今回の改革で,この点は是正されたことになる。

ところで今回の改革は,元来,受信料制度を変えようとして 着手されたものではない。いわば,政府の予算制度改革の余波を受け, 制度を変えざるをえなくなったことから始まった。

従来,受信料は,税金とは別に特別に強制徴収される負担金 であるタックス・パラフィスカル(taxe parafiscale)のひとつ として位置づけられてきた。しかし,2001年8月1日に公布された 政府予算の編成方法を改革する法律により,タックス・パラフィスカル という制度は2003年末で廃止された。そのため,受信料は税金として 徴収されることになり,今回の制度改革がすすめられていた。

豊田 一夫