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国内放送事情

巨大津波襲来と警報・メディア

~想定外をどう伝えるか~

東日本大震災では、国の想定をはるかに超える巨大な地震と津波が起きた。気象庁は当初、地震のマグニチュードを見誤り、津波の予想高さを過少に予測した。本稿では、事態が想定と予測を超えていることを気象庁や被災地の自治体、メディアがいつ、どのように認識し伝えたのか検証する。このうち、自治体は過去の津波経験が異なる2つのタイプを比較した。検証を通じ、想定外の危機は如何に伝えられるべきか考察する。

気象庁は、大津波警報の第1報の段階で、津波の予想高さを岩手県3m、宮城県6m、福島県3mと予測したが、釜石沖などのGPS波浪計から、沖合の潮位が急上昇していることに気づき、警報を更新し、津波の予想高さを引き上げた。

岩手県釜石市の災害対策本部は、地震の揺れ方と長さから事態の深刻さを直感し、津波の予想高さ3mを3m以上として防災行政無線で伝えた。その後、予想高さが6mに引き上げられたが、それが釜石沖の潮位の急上昇によるものであることは伝えられていなかった。結局、予想高さは定かではないとして途中から伝えるのをやめた。宮城県山元町の災害対策本部や亘理消防本部の職員の多くは、巨大な津波が押し寄せるのを見て初めて、想定外の危機を知った。避難を呼びかける文言は、津の高さが6メートルから10メートル以上に引き上げられても変わらなかった。

NHKの報道局が事態の重大さを明確に認識したのは、ロボットカメラの中継映像であった。以後、巨大津波に関する更新情報と中継映像を放送のメインに据えた。最初の情報更新では、時間が切迫していることなどから、岩手・宮城両県の津波の予想高さが
一番重要度の高い情報であった筈だが、気象庁から報道機関などに送られる電文の順番は、警報・注意報が更新ないしは切り替えられた地域が最初だった。

以上の検証から、想定や予測を超える事態を的確に伝えるためには、①沖合のGPS波浪計や海底水圧計の実況値を積極的に活用する②更新情報にプライオリティをつけて重要な情報から順序立てて伝える③同じ予報区内でも、津波災害に対する感受性が異なる地域差に配慮する必要があることを指摘する。

メディア研究部(メディア動向) 福長秀彦