国内放送事情

東日本大震災に見る大災害時のソーシャルメディアの役割

~ツイッターを中心に~

津波や原発事故による被害もあわせ未曾有の大災害となった東日本大震災は、情報伝達の面で16年前の阪神・淡路大震災と比較した場合、インターネットの普及によりツイッターに代表されるソーシャルメディアが、テレビ・ラジオなどの既存メディアと並んで一定の役割を果たしたことが大きな違いとなっている。ツイッターを中心に、ソーシャルメディアが今回の震災の情報伝達においてどのような役割を果たしたのかを概略的に紹介する。

東日本大震災は国内観測史上最大規模のマグニチュード9.0を観測し、東北地方から関東地方の太平洋沿岸は大津波に襲われた。一連の地震・津波による死者はすでに15,000人を超え、阪神・淡路大震災(死者6434人)を超える未曾有の大災害となった。
今回の震災では、テレビ・ラジオなどの既存メディアに加え、ツイッターに代表されるインターネットを使ったソーシャルメディアが情報伝達ツールとして一定の役割を果たしたことが、阪神・淡路大震災の時とは大きく異なる特徴として挙げられる。なかでもツイッターは、地震発生から1時間以内に東京からだけで毎分1200件以上のツイートが投稿され、地震の発生翌日(3月12日)の新規加入者数は前月(2月)の1日あたりの新規加入者数46万人を大きく上回る57万2000人にのぼるなど、多くの人がツイッターを通して活発な情報交換を行った。また、このほかのソーシャルメディアもフェイスブックが友人・知人の安否確認に用いられたり、ユーストリームなどの動画配信もテレビの災害報道を同時配信することでサイトの訪問者数を大きく伸ばすなど、ソーシャルメディアはこの震災を機に情報伝達ツールとしての社会的ポジションを確立するための大きな一歩を踏み出したといえる。

ただ、その一方でコスモ石油の火災に関するデマに見られるように、インターネットを介したデマ情報が数多く広まったのも今回の震災の特徴である。ソーシャルメディアは既存メディアで十分に伝えられない部分をカバーする役割を担うことで、今後も既存メディアとの共存・発展が期待されるが、その一方で使い手側のリテラシーの向上や、ソーシャルメディア自体が社会的存在としての自覚をより強く持つことが今後の健全な成長のために求められている。

メディア研究部(メディア動向) 吉次 由美