国内放送事情

調査研究ノート

テレビ広告を取り巻く多様な変化

~同時並行で進む「主導権の移行」~

電通が今年2月に発表した「日本の広告費」によれば、急成長を続けてきたインターネット広告が初めて新聞広告を抜き、媒体別でテレビ広告に次ぐ規模となった。一方のテレビ広告は、2005年から連続して減少しており、新聞、雑誌、ラジオの各広告の減少と合わせ、マス広告離れとも言える動きが続いている。

昨年3月以降の景気の緩やかな回復期の中で、テレビ広告はどのように変化しているのか。広告主企業のテレビ広告の見方にどのような変化が表れているのか。同時並行的に起きる多様な変化は、番組制作にどのような影響を及ぼすのだろうか。在京キー局の決算報告書と今年3月に実施した広告主アンケート、そして各社ヒアリングから読み取る変化をまとめ、テレビ広告全体の変容を捉える。

在京キー局の2009年度決算では、主軸となる広告収入が軒並み8%~16%の減収となった。本業の放送収入について詳しく見ると、長らく民放の経営基盤を支えてきたタイム広告とスポット広告という2大放送収入の体系が崩れ、スポット広告化が進んでいることが分かる。また、広告主アンケートによれば、ネット広告の成長が持続する中で、口コミやSNSを活用した新しい広告手法に注目が集まっていることであるが読み取れる。ツイッターなどのソーシャルメディアなど、消費者が作り出すメディアが存在感を増しつつある。さらに、今後テレビ自体のネット接続が進むことで、テレビ広告のあり方が根本から変わりうる。圧倒的な認知力を持つテレビ広告に、ネット広告の持つ豊富な情報量が加味されることによる媒体価値向上に多くの広告主が期待感を示している。こうしたテレビ広告を取り巻く多様な変化の中には、ある共通項を見出すことができる。それは「主導権の移行」であり、同時にそれは顧客が影響力を持ち始めることを意味している。第一の「テレビ広告のスポット化」により、番組作りに対して広告主が影響力を持ちうる状況が生じることを示している。第二の「広告のソーシャル化」は、一方的に企業から投下されていたこれまでの広告を消費者の発言が動かすようになり、商品開発にも影響力を持ち始めることを示している。第三の「テレビのネットワーク化」では、番組・広告作りに視聴者の意見がより反映されやすい状況が生じることが想定される。

テレビ広告を取り巻く「主導権の移行」はともすれば「番組の広告化」に至る危険性を持つ一方で、ソーシャル化による視聴者の発言や広告主の発言力増大が、番組の質向上に寄与する可能性も秘めている。両刃の剣となりうる主導権の移行が今後どう推移するのか、今後も注視する必要がある。

メディア研究部(メディア動向)小川 浩司