国内放送事情

避難情報と放送メディア

~データ放送システムの可能性~

多メディア化が進む中にあっても、災害時には、テレビで警報を知る人が圧倒的に多い。しかし、避難の勧告や指示をテレビで知る人は警報と比べると常に少ない。それは何故か。また、避難情報とデータ放送システムの可能性について、2010年7月の大雨を例に考察する。

緊急時に有効な情報とは、的確な危険回避行動を人びとに促す情報だ。警報や避難情報の内容は、キメ細かく、具体的、迅速に伝えることが重要である。

気象警報や土砂災害警戒情報は市町村ごとに細分化して出されるが、気象台から放送局にオンラインで配信されるので、すぐに放送される。一方、避難情報は放送局の記者が市町村に電話をかけて収集している場合が多いから、放送されるまで概して時間がかかる。また、放送の特性上、細かい地区名が一度に多数発表された場合に、一つ一つは速報し切れないことも多い。避難情報をテレビで知る人が警報に比べると少ないのは、こうした実情による。

避難情報をテレビで迅速に、きめ細かく伝えるにはどうしたら良いか。期待されているのが、自治体間のネットワークと放送局を結び、避難情報などをデータ放送の画面で伝えるシステムである。各市町村が端末に入力した避難情報は県を通じて放送局に自動的に転送される。視聴者は、郵便番号設定によって自分が住んでいる地域のどの地区に、どんな避難情報が出されているのか、活字ベースの画面で検索できる。

2010年7月20日現在、6府県がこれによって避難情報を配信している。2010年7月の大雨の際、NHK和歌山放送局は、このシステムによって初めて避難勧告の情報をデータ放送で伝えた。自治体の入力から15分で放送された。

放送局や自治体の不断の検証と工夫によって、迅速・正確な入力が担保されれば、データ放送だけでなく、速報取材のツールとして本放送にも活用できる可能性が大きい。

メディア研究部 福長秀彦