国内放送事情

「政権交代選挙」報道にインターネットユーザーはどう接したか

~各メディアへの接触状況を探る~

2009年8月に行われた衆議院選挙の開票速報は、「3スクリーンズ」時代の本格的な到来を反映して、従来のテレビ・新聞といったメディア以外にインターネットやワンセグでも伝えられ、情報収集手段の選択肢は大幅に広がった。こうした中で、「3スクリーンズ」に最もなじんでいると思われる、インターネットのヘビーユーザーがどのようなメディアを用いて情報を収集したのか、また、今後の開票速報に何を望んでいるのかを探る。

昨年(2009年)8月30日に投開票が行われた衆議院選挙は、民主党が圧勝して政権交代が実現する歴史的な選挙となり、投票率も現行の小選挙区比例代表並立制導入以降では最高となるなど有権者の関心も非常に高いものであった。こうした国民の関心の高まりやいわゆる「3スクリーンズ」時代の本格化を反映して、マスコミ各社は今回の選挙の開票速報を、インターネットやワンセグなど多様なメディアを通して伝えた。また、ヤフーやグーグルなど大手報道機関以外の企業も、独自の開票速報のホームページを設けるなど、情報収集の選択肢は大幅に広がった。NHK放送文化研究所が、インターネットのヘビーユーザーを対象に行ったアンケート調査によると、彼らが開票速報の情報を入手するために使ったメディア(複数回答)では、「テレビの開票速報」がNHK・民放ともにインターネットを上回り、1位・2位であった。その一方で、全体状況はテレビで把握しつつ、個人的に関心のある選挙区の状況はインターネットでチェックするなど、利用者の側が目的に応じてメディアを使い分けている様子も浮き彫りとなった。また、今後各メディアの開票速報に期待することを尋ねた質問では、テレビに対しピンポイント情報をインターネット並みに細かく使いやすく提供することを、インターネットに対し全体状況をテレビ並みに迅速に伝えることを求める意見が多く出され、1つのメディアで自分のニーズを満たしたいという意向が明確に示された。

メディア研究部(メディア動向)吉次 由美